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“ルーニー以来の逸材”に高まる期待。
バークリーはW杯でブレイクするか。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/06/13 10:30

“ルーニー以来の逸材”に高まる期待。バークリーはW杯でブレイクするか。<Number Web> photograph by Getty Images

今季エバートンではリーグ戦34試合に出場し、6得点。マルティネス監督も「ポール・ガスコインとミヒャエル・バラックを足したような選手だ」と称賛する。

堅守を好む指揮官の目には守備の課題が。

 但し指揮官は、守備面の働きで次世代のトップ下を信用するには至っていないようだ。「学ぶべきことは多い。ロストボールが目に付いた」

 というエクアドル戦後の厳しいコメントは、“バークリー熱”を抑える狙いもあったには違いないが、基本的に堅守を好む指揮官の本心でもあったはずだ。

 20歳のプレーメイカーは、エバートンでのレギュラー定着1年目だった今季、まずは長所を磨く育成を重視したロベルト・マルティネス監督の計らいにより、守備面の責任を免除されていたと言ってもよい。攻撃志向でもあるマルティネスは、フィジカルに恵まれた体に高度な技術と創造性を秘める逸材に「最終的には一線級のセンターハーフ」という将来像を描いてはいても、「今のロスにはこのポジションが最適」と言って、より守備の負担が少ないトップ下を才能発揮の持ち場として与えていた。

現実的には、ジョーカーとしての出場が濃厚か。

 最終テストマッチとなったホンジュラス戦にしても、実はチャンスよりも先にピンチを作り出しかけている。

 バークリーは後半開始から20秒足らずで、自陣内でのドリブルに失敗して敵のカウンターを招いたのだ。幸い、ジャギエルカの果敢なクリアで事なきを得たが、同じW杯出場国との対戦でも、相手がイタリアなら数的不利の局面からゴールを奪われていたかもしれない。失点は免れたとしても、不用意に譲ったポゼッションを取り戻す難易度はホンジュラス戦の比ではない。

 おまけに、初戦でイタリアに敗れた場合のイングランドには、続くウルグアイ戦でW杯グループステージ敗退が決まるという最悪のシナリオも危惧される。

 となればイタリア戦では、献身的な守備でもトップレベルのルーニーの両脇に、本来はFWだが運動量が豊富なウェルベックと、ハードワークとクリエイティビティの共存をアピールしたララーナが並ぶ2列目が濃厚だ。ウェルベックは恐らく確定で、ララーナもスターリングの出場停止によって、テストマッチ3試合中の2試合に先発起用されている。

 そしてバークリーは、後半の切り札としてベンチスタート。敵の運動量が落ちるはずの後半に、若く攻撃的なエネルギーを前線に注入するという策は理にも適っている。つい先月まで「ルーニー次第」と言われたイングランドにすれば、代替策がベンチに存在するだけでも有り難い状態だ。

【次ページ】 10年前のルーニー以来となる期待感。

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