ブラジルW杯通信BACK NUMBER
“ルーニー以来の逸材”に高まる期待。
バークリーはW杯でブレイクするか。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2014/06/13 10:30
今季エバートンではリーグ戦34試合に出場し、6得点。マルティネス監督も「ポール・ガスコインとミヒャエル・バラックを足したような選手だ」と称賛する。
エバートンでトップ下としてブレークしたバークリー。
今季、エバートンのトップ下として台頭したバークリーは、6月4日のエクアドル戦で代表戦初先発の機会を与えられた。結果は、控え組が中心の顔触れとはいえ自軍最高の出来。前半2分から、敵陣内でボールを奪ってCKへの流れを作り攻撃の口火を切った。14分には、相手DFを背負いながらのバックヒールで、左サイドで先発したルーニーにシュートチャンスを提供。その7分後には、自陣深くでルーズボールを拾うと、2度のスライディングタックルにも耐えてドリブルを続け、好機を演出した。
実際に得点に絡んだのは後半の51分。ファーストタッチと同時のターンで相手MFを股抜きでかわすと、ドリブルで相手DF3名を引き付けてからのラストパスでリッキー・ランバートのゴールをアシストしている。
5日前のペルー戦では、チームの順当勝ちとは裏腹にルーニーのインパクト不足が指摘されていただけに、躍動感と存在感に満ちたバークリーのプレーが観る者の目を引いた。
続く7日のホンジュラス戦では、ハーフタイムを境にルーニーとの交代でトップ下に投入された。ピッチに立って間もない47分、ウェルベックがダイアゴナルランで相手DFの注意を引き付ける間に、ジャック・ウィルシャーとのワンツーからバークリーがミドルでゴールを狙ったシーンは、代表の将来へのビルドアップとも言うべき展開だった。
巷では、ルーニーのベンチ降格説まで……。
結果として、巷ではルーニーのベンチ降格説まで囁かれるようになった。もっとも、この意見は、「メディアが煽る“バークリー熱”に同調はできない」とホジソンが言うように極端すぎる。
キーマンであるルーニーをスタメンから外せば、対戦相手が喜ぶだけだ。しかしイタリア戦でも、ルーニーを左サイドで使ってバークリーとの共存を図る手はある。エクアドル戦での左サイド起用は、今季終盤を怪我で欠場したルーニーのマッチ・フィットネスを高めることが主目的だったのだろうが、事ある度にルーニーの「万能性」を強調してきた指揮官には、オプションとしての起用法を試す狙いもあったはずだ。
実際、トップ下・バークリーとの呼吸は悪くなかった。中盤最深部を主戦場とするイタリアの策士、アンドレア・ピルロの注視はスピードとスタミナに勝る若手に任せ、自身は左サイドから中央へと流れつつ、チャンスメイクに意識と時間を割く役割は、ルーニーの効果的な起用法と言えなくもない。