MLB東奔西走BACK NUMBER
「ダイスケはブルペンで価値が高い」
松坂大輔、久々の勝利と遠い“先発”。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2014/05/31 10:30
5月25日のダイヤモンドバックス戦、6回3安打2失点6三振2四死球で今季2勝目を挙げた松坂大輔投手。2回には打者としてレフト前ヒットを放つなど、投打にわたる活躍を見せた。
先発として披露した、目指していた投球スタイル。
キャンプ中にこのコラムでも紹介しているが、このオフは身体の使い方を徹底的に見直し、自分の投球を基礎から見直す作業を続けていた。キャンプ中もその作業を継続し、オープン戦で登板を重ねながら、徐々に自分の理想に近づけていった。
結果的には開幕メジャー入りは果たすことができなかったが、マイナーに回り先発として2試合登板した頃には、ようやく自分のやろうとしていたことが形になり始めていた。メジャー昇格したばかりの頃、松坂はこう話していた。
「マイナーで投げた2試合目の時に(自分のやろうとしている投球が)掴めましたね。今は投げながら、チェックしなければならない部分もわかっています」
この話を聞いてから、“ニュー”松坂が先発として登板する日をずっと待ち続けた。そして、実際の投球も彼の言葉を裏づけるのには十分な内容だった。
元々メッツが松坂とマイナー契約ながら再契約をしたのは、不安定な先発陣を考慮しての措置であり、もちろん、先発要員の一人として考えて契約したものだ。
メジャー昇格時も中継ぎに回ったとはいえ、体調に不安があったバートロ・コローン、ヘンリー・メヒアの両投手に代わる先発候補として位置づけられていた。
「ダイスケは、他の若い投手にとって最高の教材になっている」。
しかし松坂のメジャー昇格以降、チームは何度か先発が不足するという事態に陥ったが、マイナーから他の投手を昇格させるなどしたため、彼が先発に回る機会はなかった。
そして今回、初先発でこれだけの好投を演じ、未だ先発陣に不安を抱える状況にありながらも、試合後のテリー・コリンズ監督は松坂の先発残留を即座に否定した。
そこには大きな理由が隠されている。
「ダイスケは現時点でブルペンでの存在価値が非常に高い。たぶん他の中継ぎ(投手)以上にあらゆる仕事をすることができる。彼は5回から(複数イニングを)投げられるし、7回、8回、9回とどこでも投げられる。我々が必要としている時に、彼はその役目を果たすことができる。とにかく他の若い投手にとって最高の教材になっている」