香川真司投入で、分厚いカウンターが可能に。

　後半に入ると、ユナイテッドはギグスに代えて、香川真司を左MFに投入。ギグスよりも運動量のある香川が入ることで、カウンター時の厚みは増す。香川の近くにルーニーが位置して、そこにウェルベックが絡む。3人だけでカウンターからのフィニッシュを目指していく。

　狙いが明確なため、相変わらず選手たちのプレーには迷いが見られない。香川が中央に入ったあとで相手にボールを奪われたとしても、ルーニーがすっと左MFの位置に入り、守備をケアする。

　後半8分、相手の左サイド低い位置からのスローインの際に、中央にいた香川が自陣の左サイドを見やると、そこにはルーニーがしっかりと戻っていた。香川が片手をあげると、ルーニーが軽くうなずく。この阿吽の呼吸で守備に穴をあけずに、攻撃に変化をつけようとしていった。

世界王者の本当の強さは、選手層にこそあった。

　すると、後半13分、ユナイテッドに左サイドからコーナーキックのチャンスが訪れる。

　バイエルンがマンツーマンではなく、ゾーンで守っていたため、ビディッチはゴールから離れた位置に身を置き、ルーニーが蹴った瞬間にゴール前へ入り込んだ。セットプレーをゾーンで守るときに苦労するのは、ゴールから離れた位置から飛び込んでくる選手への対応だ。案の定ビディッチはフリーでゴール前に入り、ヘディングシュート。これがゴールにつきささり、ユナイテッドが先制を果したのだ。

　もっとも、それで屈しないのが世界王者バイエルンだ。彼らの強さはポゼッションだけでも、ハイプレスだけでもない。選手層の厚さがある。

　後半18分にミュラーをさげ、マンジュキッチを入れて前線のターゲットを作り、戦い方を変化させていく。

　これが実ったのが後半21分。それまで集中していたユナイテッドのMFによる2つ目のラインが乱れていたのを見逃さなかったマンジュキッチは、右からのクロスを狙い澄まして、中央に落とす。そこに入り込んだシュバインシュタイガーが上手くあわせて、試合は振り出しに戻った。

【次ページ】　この試合に限れば、勝者はマンUなのかもしれない。