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佐藤信夫コーチに「最高の恩返し」。
浅田3度目の世界王者までの4年間。 

text by

田村明子

田村明子Akiko Tamura

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photograph byAsami Enomoto

posted2014/03/30 11:15

佐藤信夫コーチに「最高の恩返し」。浅田3度目の世界王者までの4年間。<Number Web> photograph by Asami Enomoto

フリーでわずかなミスがあったが、自己最高の216.69点で優勝した浅田。今後の去就については「じっくり考えたいと思います」とコメントした。

「ここでは点数よりも、自分の全てを出し切ろうと思って滑りました。バンクーバー五輪後、一からやってきたことをようやく評価してもらえたかなと思います」

 3月29日、フィギュアスケート世界選手権で金メダルを手にした浅田真央は、すっきりとした明るい表情でそう語った。世界タイトルは2008年、2010年に続いて今回が3回目。

 日本女子としてはもちろん新記録で、過去25年の間では5回世界タイトルを手にしたミシェル・クワンに次ぐ記録である。だが本人は結果のことを考えずに、五輪での悔しさをぶつけたのだという。

SP歴代最高点でソチ五輪のリベンジ。

 SP「ノクターン」は、完ぺきな滑りだった。3アクセルをきれいに決めると、さいたまスーパーアリーナの広大な会場が轟くような歓声で満たされた。3フリップ、そして3ループ+2ループも着氷し、スピンとステップはすべてレベル4を得て、78.66を獲得。バンクーバー五輪のキム・ヨナを超える、4年ぶりの史上最高点を叩き出した。

 ソチ五輪ではこの同じSPで信じられない崩れ方をしたが、わずかな期間にネガティブなイメージをどうやって拭い去ったのか。

「滑っている最中も、ソチでは悔しかった、悔しかったと思って滑っていたので。今日は知っている方も来ているし、たくさんのファンもいらっしゃっている。これまで支えてくれた方、自分のためにもいい演技をしたいと思っていました」

 演技が終わると、まるで人の雪崩が起きたかのように見えた。驚くほどの数の観客たちが、花束を氷上に投げこむために階段を駆け下り、通路を走っている。その一人一人が、心から浅田真央を応援してきたのに違いない。

佐藤コーチへ「最高の恩返し」。

 フリーでは、冒頭の3アクセルなどいくつか回転不足の判定を取られたものの、2アクセルの着氷が乱れた以外は、力強い美しい演技だった。

 最後のステップシークエンスは満場の手拍子にのって滑りきり、フィニッシュポーズに向かってスパイラルでカーブを描くと盛大な拍手が沸いた。

 フリー138.03、総合216.69で優勝を果たし、3度目の表彰台の頂点に。「本当はソチでかけてあげたかった」という金メダルを、浅田は佐藤信夫コーチの首にかけた。過去に2度も世界タイトルと五輪銀メダルまで手にしながら、「一から技術をやり直す」と決意をした浅田が、4年前に身を預けた恩師。

「最高の形で恩返しが出来たと思います」と、嬉しそうに目元をゆるめた。また同時にファンに向けても、「いい時も悪い時も、ファンが応援してきてくれました」と感謝の言葉を口にした。今後のことはまだ決めていない。体力的には、まだまだ競技を続けていけるが、あとは精神的なモチベーションの問題だという。ようやく本格的に開花した、佐藤コーチとの二人三脚の成果。せめてあと1シーズン続けて欲しいと願うのは、私だけではないだろう。

【次ページ】 鈴木明子、現役生活最後の演技。

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