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登竜門・GP2に伊沢拓也が参戦。
琢磨、可夢偉に見るF1の厳しさとは。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroaki Matsumoto
posted2014/02/23 08:20
2月7日に開かれた「2014 Hondaモータースポーツ活動計画発表会」に先輩の佐藤琢磨とともに出席した伊沢拓也。
1月23日、ひとりの日本人ドライバーが、GP2シリーズへ参戦すると発表した。
伊沢拓也――ホンダの育成プログラムでステップアップしてきた今年30歳を迎えるベテランである。
GP2シリーズは国際F3000に代わって、2005年からスタートしたF1への登竜門カテゴリー。過去にニコ・ロズベルグ、ルイス・ハミルトン、パストール・マルドナド、ロマン・グロージャンらがチャンピオンを獲得して、F1への切符を手にしてきた。
日本人ドライバーも'05年の吉本大樹の挑戦を皮切りに、毎年1人以上は参戦し、過去に3人のドライバーがここからF1へのチャンスをつかんでいる。
しかし、2010年からは不在の状態が続いていた。そんな中で届けられたのが、伊沢のニュースだった。GP2に日本人が帰ってくるのは、5年ぶりのこと。しかも伊沢を支援するホンダは、2015年にF1へ復帰する。それだけに今回の伊沢の挑戦は、単にGP2への参戦ではなく、閉ざされたF1への扉を開くものとして、日本のモータースポーツ界から大きな注目を集めている。
しかし、喜んでばかりはいられない。なぜなら、伊沢が挑もうとしている道が想像以上に厳しい道だからである。じつは伊沢の発表の2日前、もうひとりの日本人ドライバーがF1に復帰するという発表があった。それはケータハムから2年ぶりにF1に復帰する小林可夢偉である。
ホンダが、可夢偉を選ばなかった理由。
もしホンダが少しでも早く日本人ドライバーをF1に乗せたいというのであれば、すでにF1で実績を積んでいる可夢偉をおいてほかに適任者はいない。しかし、ホンダは可夢偉を選ばなかった。その理由として以前、可夢偉がトヨタの育成プログラムの支援を受けてF1へステップアップしたことを挙げる者もいる。
その真偽をホンダのあるモータースポーツ関係者に尋ねると、その関係者はきっぱりとトヨタとの因果関係を否定した。
「トヨタの育成プログラム出身のドライバーだからという理由だけで、ホンダが支援しないということはありません。私たちが伊沢を選んだのは、自分たちの育成プログラムの中にいて、きちんとした評価をしたうえで決定したことです。
確かに可夢偉選手には素晴らしい実績があります。しかし、一緒に仕事をしたことがないので、ドライバーとして彼を評価する材料が乏しい。だったら、私たちの育成プログラムできちんとした評価をした上で、その中からもっとも可能性があるドライバーを選んだほうがいい。ただ、それだけです。他意はありません」