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どちらがセナでプロストなのか?
メルセデスで勃発したチーム内闘争。
posted2014/05/27 11:30
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Hiroshi Kaneko
シャンパンの香りが漂うメルセデスAMGのガレージの前で、にこやかに記者からの質問に答えていたマネージングディレクターのトト・ウォルフの顔が、こわばった瞬間があった。ウォルフはでチームの代表的存在で、ロス・ブラウンが抜けた今年、メディアの対応に忙しい。そのウォルフが鋭い目つきになったのは、イギリス人記者からのこんな質問だった。
「昨日の予選後のミーティングでは、ハミルトンとロズベルグは同席しなかったそうですね」
今年のモナコGPは、土曜日に行なわれた予選で、メルセデスAMGの間でちょっとした事件が起きた。それはQ3の最後のアタックで暫定ポールポジションに立っていたニコ・ロズベルグが、ミラボーというコーナーで止まりきれずにエスケープゾーンにマシンを止めてしまったのである。そのため、その区間はイエローフラッグが出されて、皆タイムアップできずに予選が終了した。
ついに明らかになった、ハミルトンとロズベルグの不和。
事態を重く見たレース審議委員会は、ロズベルグとメルセデスAMGのスタッフを呼び出し、調査を行った。しかし、走行データからは故意に止まったという証拠は発見されず、ロズベルグのポールポジションが確定した。しかし、チームメートのルイス・ハミルトンは、納得できなかった。
予選後、チームは日曜日に向けてミーティングを開いたが、ロズベルグが部屋に入ってくると、ハミルトンが出て行ってしまった。いつまで経っても戻ってこないので、ロズベルグとだけでミーティングを始め、ほどなく終了。ロズベルグが部屋を出て行くと、ようやくハミルトンが帰ってきたという。
冒頭の記者の質問は、このミーティングのことだった。ウォルフは「あれは、ルイスがちょっとトイレに行っていただけのことだよ」と作り笑いを浮かべたが、ウォルフを囲んでいる記者たちに、そんな言い訳は通用しなかった。なぜなら、そのとき、そこで起きていた状況が、まさに土曜日のミーティング状態だったからである。