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欧州勢にも、ルール変更にも負けず。
渡部暁斗が開く複合「新興国」の道。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/21 12:00
かつてジャンプで獲得したリードをクロスカントリーで守るのが日本のスタイルだったが、渡部暁斗はクロスカントリーを武器にして、個人NHで銀メダルを獲得した。
'90年代に勝ちすぎた日本、再び「新興国」として。
近代、ころころとルールを変えるのはテレビ放映に合わせた競技か、極端に勝ちすぎる国や選手が出た場合のことが多い。
いまでは常識となっているが、1990年代に日本は派手に勝ち過ぎた。どんどんタイム換算が日本に不利に働いていったのは周知の事実だ。
その背景にある発想を考えると、限られた国の利益を守るためという見方も出来る。冬のオリンピックの場合、夏とは違って五大陸でプレーされていることがそれほど重視されていない。こうした閉ざされた発想が生き残る余地がある。
こうした歴史を踏まえると、渡部暁斗の登場は、日本の複合の歴史において大きな転換点になると思われる。
クロスカントリーにもしっかりと対応できる選手の登場は、日本がノルディック複合の世界で「新興国」として存在感を増していく可能性を広げている。