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欧州勢にも、ルール変更にも負けず。
渡部暁斗が開く複合「新興国」の道。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2014/02/21 12:00
かつてジャンプで獲得したリードをクロスカントリーで守るのが日本のスタイルだったが、渡部暁斗はクロスカントリーを武器にして、個人NHで銀メダルを獲得した。
「閉ざされた国々」の競技、ノルディック複合。
ラージヒル個人の方は、2002年のソルトレイクシティ・オリンピックから始まった歴史の浅い種目だが、こちらはフィンランド、オーストリア、前回のバンクーバー大会でアメリカのデモングがアメリカ大陸に初の金メダルをもたらし、今回はノルウェーのグラーバックが優勝している。前回のアメリカはイレギュラーなのだ。
さらに歴史を遡り、1924年以来ノルディック複合では102個のメダルが授与されているが、内訳を見てみると、ノルウェーが30個、ドイツ(東西、統一後も含む)が21個、フィンランドが14個、オーストリアが13個で、この4カ国で78個のメダルを獲得しているのだ。
ノルディック複合は、極めて「閉ざされた国々」の競技なのである。
年 | 五輪開催地 | 金 | 銀 | 銅 |
1988 | カルガリー | 西ドイツ | スイス | オーストリア |
1992 | アルベールビル | 日本 | ノルウェー | オーストリア |
1994 | リレハンメル | 日本 | ノルウェー | スイス |
1998 | 長野 | ノルウェー | フィンランド | フランス |
2002 | ソルトレイクシティ | フィンランド | ドイツ | オーストリア |
2006 | トリノ | オーストリア | ドイツ | フィンランド |
2010 | バンクーバー | オーストリア | アメリカ | ドイツ |
2014 | ソチ | ノルウェー | ドイツ | オーストリア |
変化してきた、ジャンプとクロスカントリーの比率。
私の目からは、ノルディック複合については閉ざされた競技であるべくルール変更を重ねてきたように見える。近年の大きな変更は次の通りだ。
●ジャンプの1ポイントあたりのタイム換算
カルガリー~アルベールビル(日本が強かった時代) 6.7秒
リレハンメル 6.5秒
長野 6秒
ソルトレイクシティ 5秒
トリノ以降 4秒
●ジャンプの回数
バンクーバーより、2回から1回に
団体競技が採用されたカルガリー大会以降、特にジャンプのポイントのタイム換算は、毎回のように変わってきた。
私の考えでは「変わってばかりいるルールは悪いルール」と思っている。
たとえば「オフサイド」はサッカー、ラグビーにとって不変の、競技の根幹を成すルールだ。これは「名ルール」なのである。