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激戦の女子フィギュアに名乗り!
2つの幸運を持つ15歳、リプニツカヤ。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2014/02/18 10:40
ショート、フリー両方に登場し、プルシェンコとともにロシアの団体金メダルの立役者となったリプニツカヤ。シングルでも浅田ら日本勢の強力なライバルになりそうだ。
「ユリアにはわざとらしい笑顔は要らない」
オフシーズン、彼女は新たなステージとして、表現力のブラッシュアップに力を注いだ。
ソルトレイク五輪のアイスダンス銀メダリストの振付師がベースになる部分は作ったが、受け身で終わらせずに、彼女自らが次々とアイデアを出した。
ショートはロシアでは人気がある歌謡曲のクラシックバージョン。演技のテーマを“自分自身を表現する”と自ら決めた。
「ユリアにはわざとらしい笑顔は要らない。シャイだけれど、心に熱い炎を持つ努力家。そんな彼女自身を表現するのにピッタリの曲になった」とコーチ。
フリーの『シンドラーのリスト』は、映画に登場する赤いコートのユダヤ人少女を演じるのだが、自ら衣装をデザインした。「身体にフィットして納得いくデザインの衣装にするまで、何度も作り直しました」とこだわりも見せる。万全の準備でシーズンをスタートさせた。
10月のフィンランディア杯は連覇、スケートカナダ、ロシア杯とGPシリーズは2連勝。グランプリファイナルも浅田真央に次ぐ2位となった。そして14年1月の欧州選手権では、史上最年少の15歳で優勝。しかも得点は200点を超えた。
正確なジャンプとスピン、そして高い演技構成点。
得点源は、正確な3回転+3回転のジャンプと、確実に高い評価を得られるスピン。そして今季は自らが振付に参加しただけあって、音楽と一体化した表現力は15歳とは思えない成熟したもので、演技構成点の「演技力」や「音楽解釈」で高得点をマークした。
'14年1月、ロシア女子2枠の五輪代表に決定。しかも団体戦はショート、フリーとも彼女が出場することになった。しかし自国開催の五輪、しかも最初の種目というプレッシャーの中、リプニツカヤはパーフェクトをやってのけた。団体戦で金メダルを獲得すると、こう言った。
「今日のような会場の雰囲気は初めてです。1秒たりとも沈黙がなく声援が聞こえて、すごく力になりました。今大会初の金メダルをロシアにもたらすことができて幸せです。団体戦に出たことで会場の雰囲気も分かったし、個人戦はもっといい演技ができると思います」