ソチ五輪EXPRESSBACK NUMBER
皇帝プルシェンコの華麗なる復活劇。
少年のような笑顔と、永遠の向上心。
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph bySunao Noto/JMPA
posted2014/02/10 16:30
フリーの演技を終え、満足げな表情で観客の大歓声に応えたプルシェンコ。31歳、フィギュアスケーターとしてはかなりベテランと言っていい年齢だが、衰えるどころか凄みを増してきた。
「彼はカリスマであり、ロシアのパワーだ」
この後に滑ったユリア・リプニツカヤの活躍もあり、団体戦はロシアが金メダルを獲得。プルシェンコにとって4つ目の五輪メダル、そしてロシアにとってソチ五輪最初の金メダルだった。プーチン大統領自らが「よくやった」とプルシェンコ達を祝福するのを観ながら、アレクセイ・ミーシンコーチは自慢げにこう言った。
「今日は無理なリスクをさけて4回転は1本にした。彼はカリスマであり、ロシアのパワーだ。誰も彼のようにはなれない。大多数の人間が彼に憧れ、一部の人間がねたむ存在なんだ」。
皇帝は存在を証明した。しかし団体戦が最終目標ではない。
「今日のフリーは、羽生結弦もパトリック・チャンもいない。だから4回転は1本で十分だと考えた。個人戦のフリーでは4回転を2本入れたい」
それにね、といってプルシェンコは少年のような笑顔で続けた。
「あと僕は、トリプルアクセル+3回転フリップというジャンプを練習してあるんだ。これはまだ世界で誰も跳んだことのないジャンプだからね」
永遠の向上心が彼のエネルギー源なのだろう。驚異の31歳は、13日からの男子シングルに全ての闘志を捧げる覚悟だ。