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皇帝プルシェンコの華麗なる復活劇。
少年のような笑顔と、永遠の向上心。 

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野口美惠

野口美惠Yoshie Noguchi

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photograph bySunao Noto/JMPA

posted2014/02/10 16:30

皇帝プルシェンコの華麗なる復活劇。少年のような笑顔と、永遠の向上心。<Number Web> photograph by Sunao Noto/JMPA

フリーの演技を終え、満足げな表情で観客の大歓声に応えたプルシェンコ。31歳、フィギュアスケーターとしてはかなりベテランと言っていい年齢だが、衰えるどころか凄みを増してきた。

「この演技を7歳と1歳の息子に捧げたい」

「観客の反応も凄かったね。それは助けになるし嬉しいんだけど、今日はちょっとうるさかったかな。アッチからもコッチからも手拍子しか聞こえなくて、ノックダウンされそうだった。でも4回目の五輪だからね。楽しいよ。すごく新鮮な気分だ。31歳になってまだ試合に出て、10代の選手と競い合った。この演技を7歳と1歳の息子に捧げたい」

 復活への第一歩を記したプルシェンコは、上機嫌だった。

 2日空けて9日のフリースケーティング。この時点では北米メディアは「ショートは完璧でも、フリーはスタミナが足りないだろう」という予想だった。実際、12月のロシア国内選手権ではフリーでミスが多く、若手に破れ2位になっている。

曲はなんと「ベスト・オブ・プルシェンコ」!

 ところが、皇帝は大舞台ほど強かった。フリーの演技前、両手の指を胸の前で「カッ」と開き、全身にエネルギーを充填していく様は、まさに超人的。冒頭の4回転、そして3回転ルッツ、トリプルアクセルと成功させると、会場のボルテージが上がった。

 曲はなんと「ベスト・オブ・プルシェンコ」。'06年トリノ五輪で金メダルを獲得したフリー「ゴッドファーザー」に始まり、'10年バンクーバー五輪の「タンゴ・アモーレ」、'02年の「アルビノーニのアダージョ」など、ロシア国民がこの十数年にわたって観てきた名曲が連なる。曲調が変わる度に「待ってました」とばかりに歓声が起きた。

 後半のジャンプが2回転になる部分はあったが、転倒や着氷ミスはなく、一糸乱れぬパフォーマンス。演技を終えたプルシェンコは、いつにない澄んだ瞳で、満場の客席を見上げた。薄いブルーの瞳に、うっすらと光るものさえあった。

「自分の演技にもチームの結果にも大満足だ。ショートもフリーもベストを尽くすことが出来たし、かつてない大歓声を浴びた。とにかく今日はチームのために滑って気持ちが良かった」

 得点は168.20点で首位。団体戦なので総合点は出さないが、ショートとフリーの合計は259.59点で、トリノ五輪もバンクーバー五輪も上回るポイントだった。

【次ページ】 「彼はカリスマであり、ロシアのパワーだ」

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