セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
「本田は火星人」の意味すること。
伊紙が指摘する新10番の泣き所。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/02/03 12:10
トリノのCBモレッティから執拗なマークを受け、試合を通して苦しんだ本田。「鳥かごに入れられたように苦しんでいた」と報じたのはトリノの地元紙。
どうやら本田圭佑は、一人だけ遠い宇宙の彼方でプレーしていたらしい。
ミランは2月1日、ホームで迎えたセリエA22節トリノ戦を1-1で引き分けた。どうにもこうにも噛み合わなかった本田を翌日の『ガゼッタ・デッロ・スポルト』は“火星人”と評した。
「金星から来たチームメイトと火星から来た本田」
サッカー選手の寸評であっても、こういうロマンチックな表現をさせたらイタリアの右に出る国はない。
ただし、一方でサッカーにシニカルな彼らは「周囲との相互理解が少なすぎる」「右サイドは完全に彼のポジションではない」という鋭い指摘を付け加えるのも、もちろん忘れなかった。
本田がミラノへ上陸して、はや1カ月が過ぎようとしている。
セリエAデビューした19節サッスオーロ戦の直後にアッレグリ監督が解任された。セードルフ新監督の下で仕切り直しとなった20節ベローナ戦以降、本田は連続先発しチームは連勝。勝ち点差1の6位だったトリノにも勝って、一気に上位との差を詰めるはずだった。
本田は、前節カリアリ戦同様、4-2-3-1の2列目右で先発。雨模様のサンシーロで、背番号10はチームメイトたちと再び試合前に円陣を組んだ。
ミラン攻勢で試合スタート、6分には早速チャンスも。
ミランの重心は高かった。とりわけ、出場停止のFWバロテッリの代わりに1トップへ入ったFWパッツィーニと、2列目の3人(FWロビーニョ、MFカカ、本田)による攻撃カルテットの重心は、ペナルティエリア内に留まるパッツィーニのプレースタイルの影響もあって、これまでにもまして高かったのだ。
6分、本田の左足がトリノDF全員の背筋を一瞬凍らせる。エリア正面でMFムンタリからのパスに反応した本田は、ゴール前に抜けようとするロビーニョとパッツィーニに、ステップしながら左足のヒールパスを通した。
惜しくもオフサイドになったが、未完の天才FWカッサーノ(現パルマ)が出て行って以来、ミランでは久しく見られなかったクリエイティブ・プレーだった。
再び何かを試すための残り時間はたっぷりあった。だがそれ以降、見せ場を作ることはできなかった。