フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
各国五輪代表が出揃い、ソチ本番へ。
フィギュア日本勢の全ライバル検証。
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byYusuke Nakanishi/AFLO SPORT
posted2014/01/29 10:45
フィギュアスケート界の“帝王”エフゲニー・プルシェンコが帰ってくる! 31歳になった伝説のスケーターは、4度目の出場となるソチでどのような演技を見せてくれるのだろうか。
ダークホースと言われるベテランのアボット。
全米選手権では、28歳のジェレミー・アボットが素晴らしい演技を見せて4度目のタイトルを手にした。
昨シーズンは腰部脊柱管狭窄症をなだめながらの競技生活で、世界選手権を逃したアボット。だがボストンで開催された全米選手権では、4回転を含むSPとフリーをほとんどノーミスで滑り、274.27という高得点だった。国内選手権のスコアはどこの国でも国際大会より高めに出すことは普通だが、今回のアボットの演技内容を見る限り、そこまで底上げされたスコアにも思えない。
「ジェレミーが完璧に滑ったら、誰にも負けないと思う」と先日講演でNYに来たブライアン・ボイタノが口にしたが、それもあながち身びいきな感想ではない。アボットは「オールラウンドスケーター」と関係者たちの誰もが認める実力があり、好調時には4回転もきれいにきまる。加えて音楽表現が抜き出ていてトランジションもうまく、いわゆるジャッジ好みのスケーターだといえる。ボイタノが言うように、彼がソチでノーミスの演技を見せたなら、かなりの点が出るだろう。
「バンクーバー当時の自分は、五輪に出場することだけしか考えていなかった。でも今回は、表彰台を目指すというはっきりした目標がある」電話インタビューに答えて、アボットはそうコメントした。メダル候補からはずせない選手の一人だ。
怖い存在になる可能性もあるゴールド。
女子は、昨年度2位だったグレイシー・ゴールドが初の全米タイトルを手にした。
ジャンプの質も高く、スピンも教本のようにポジションがきれいなゴールドの才能は、万人が認めるところである。だがこれまでSPかフリーどちらかでミスを重ねて順位を落とすことが多かったが、ボストンでは2つのプログラムをみごとにまとめて見せた。
9月にはミシェル・クワンなどのチャンピオンを育てたベテランのフランク・キャロル・コーチのもとに移り、メンタル面でのアドバイスもきっちり受けていることだろう。ソチ五輪の女子でサプライズがあるとすれば、ロシアの2人かこのゴールドとも言われているだけに、目が離せない18歳である。
2位は今季ジュニアGPファイナルで4位だったポリーナ・エドモンズ。3位には長洲未来が入ったが、USFSA(米国フィギュアスケート連盟)は3人目の五輪代表に、4位だったアシュリー・ワグナーを選んだ。
長洲がここ何シーズンも好不調の波が激しく結果が安定しなかったことに対し、ワグナーは2年連続してGPファイナルに到達し、福岡でも3位に入賞。その安定性が見込まれての選抜だろう。先日の四大陸選手権で長洲が10位に終わった結果を見ても、USFSAの選択は妥当だったと言える。