野球善哉BACK NUMBER
5年で4人ベテラン捕手獲得の阪神。
GMが就任しても、迷走は終わらない。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/01/17 10:40
昨季は108試合に出場、DeNAの正捕手を務めた鶴岡一成。DeNA退団の挨拶後に、涙を浮かべて新たな決意を語っていた。
昨年の秋に落胆した虎党の姿が甦ってきそうである。
今では、大阪の街で知る人ぞ知る存在となった大阪桐蔭の西谷浩一監督は、昨秋のドラフト以降、虎党からこんな声をかけられるようになったという。
「カントクゥ、なんで阪神は森友哉(大阪桐蔭→西武)を指名せーへんかったんや」
プロからの指名を待つ側からすれば、そんなことをいわれてもどうしようもないのだが、それほど阪神ファンにとっては、タテジマに袖を通す森を見たかったのだ。いや、藤浪晋太郎-森の大阪桐蔭バッテリーを見たかった。ややもすると、関西の野球ファンの総意でもあるだろう。
昨秋のドラフトで、阪神が森を指名しなかったことは、虎党の中ではクッキリ印象に残っている。
その阪神が、このほどFAでDeNAに移籍した久保康友の人的補償として、捕手の鶴岡一成を獲得したのである。
「鶴岡は勝負強く、いやらしい打撃をする。リードも巧み。ベイスターズのレギュラーだし、キャッチャー全体の底上げになる」
阪神の中村勝広GMは、鶴岡の獲得についてそう話したそうだが、地元ファンのドラフトへの期待には耳を傾けず、一方で、5年連続して他球団から捕手を獲得するという選択には、虎党の心中察するに余りあるというものである。
正捕手の固定が阪神の懸案事項であるのは周知の事実。
鶴岡一成という捕手としてのパーソナルな力量に申し分はないが、ここへきてのベテラン捕手の獲得は、過去の失敗を繰り返している印象が拭えない。
それにしても、就任して2年目になる阪神・中村GMの編成手腕に、はっきりとした色が見えてこないのは、なぜだろうか。
ここ近年の阪神にとっての懸案事項が、正捕手の固定であることは周知の事実である。
今さらながらではあるが阪神の進歩が止まった遠因を考えると、黄金時代を支えた矢野燿大の後釜が見つかっていないという問題に行き着くと思っている。