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できないことと、あえてしないこと。
高梨沙羅、唇を噛んだ1年前との違い。 

text by

松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byShino Seki

posted2014/01/17 10:45

できないことと、あえてしないこと。高梨沙羅、唇を噛んだ1年前との違い。<Number Web> photograph by Shino Seki

ソチ五輪から五輪種目に採用されたスキージャンプ女子。17歳の世界女王は、その名を歴史に刻むことができるだろうか。

安全策をとっても、2位に大差をつける強さ。

 ただ遠くへ飛ぼうとするばかりでなく、冷静な試合運びを示したところに成長がうかがえた。17歳ではあるが、中学1年以来、日本代表として数々の大会を転戦してきた経験、それを糧にしてきた向上心の強さをも思わせた。

 もうひとつ浮かび上がるのは、安全策をとっても、2位に20点近い大差をつけて勝利したことだ。他の選手と比較して、高梨の抜きん出た力を物語っているし、だから冷静でもいられるのだろう。

 札幌の大会では、高梨とともにソチ五輪代表に選ばれている19歳の伊藤有希も存在感を示した。11日は1回目こそ17位だったが、2回目にトップの飛距離となる95mの好ジャンプを見せて順位を上げ、表彰台まであと一歩の4位。12日は1回目で90.5mを飛び、高梨に次ぐ2位につけた。2回目は81mにとどまり8位に終わったが、スタートを切った直後は向かい風だったのに踏み切る前に風がなくなっていたという。

 そんな不運が影響したこともあってか、本人はこう振り返る。

「2回目の方が悪くないと思います。ジャンプは安定してきています」

 小学6年生のとき、国際大会で史上最年少の表彰台となる3位になったのをはじめ、高梨に先行して活躍してきた伊藤は、高校時代、苦しんだ時期もあった。だが、昨春、土屋ホームに入社。同社スキー部の監督でもある葛西紀明やベテラン選手の指導を受ける中で、復調してきた。

 札幌大会を終えて、ワールドカップ7戦6勝と磐石の強さを見せる高梨、上位を目指すポテンシャルを感じさせた伊藤。両者ともに、ソチ五輪へ向けて、まずは順調に歩んでいることを感じさせた。

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