セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
上々デビューと監督の解任問題。
ミランの“HONDA 10”、波乱の船出。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byREUTERS/AFLO
posted2014/01/13 13:00
ミランの10番を背負い、劣勢のチームに反撃の切り札として投入された本田圭佑。持てる能力の片鱗は見せた。本領はこれからだ。
スクランブル(緊急発進)だった。
本田圭佑は、12日夜のセリエA19節サッスオーロ戦で、新天地ミランでのデビューを果たした。
アウェーゲーム用の白いユニフォーム。背中には、“HONDA 10”という赤い背番号が躍っていた。
前日会見で「試合展開次第で本田を出す可能性はある」と言っていたアッレグリ監督にとっても、ゲームの展開は完全に予想外だったのではないだろうか。
北イタリア名物の濃霧に包まれたキックオフ早々、先発のFWロビーニョとFWバロテッリが13分までに2点を挙げ、リーグ前半戦の最終節は楽勝ペースかと思われた。
ところが2分も経たないうちに、サッスオーロのイタリアU-21代表FWベラルディに1点を返され、あれよあれよと言う間に同点とされると、41分にはついに逆転を許してしまう。ベラルディのハットトリックによって、ジャイアントキリングの匂いを嗅ぎつけた観客たちがざわめき始める。
ハーフタイム中から軽いストレッチやボールタッチを始めていた本田は、後半の笛が鳴るとFWパッツィーニらとさらにウォーミングアップの強度を上げた。
47分にベラルディが4ゴール目を決め、2点差とされる。濃霧で視界が不自由だったとはいえ、ベテランGKアッビアーティとCBボネーラは、チャンピオンズリーグ16強に進出したチームのスタメンとは思えないミスをくり返した。サッスオーロの勢いは止まらない。
ミランのベンチ前は俄然慌しくなった。パッツィーニと主将モントリーボが同時に投入された後の65分、第4審判のLEDボードに“10”の文字が点灯した。
FKをまかされ、ポスト直撃のシュートも放った。
ロビーニョと入れ替わりにタッチした本田は、ゆっくりとした足取りで右サイドに入った。
すぐに積極的にボールを受けに行く。69分、左クロスに合わせてゴール前でヘディングシュートを放つも、これは味方のパッツィーニがブロックする形になってしまった。
パッツィーニとバロテッリが2トップに並び、カカが左サイドに開く。本田が右サイドに入った緊急攻撃用の4-4-2で、ミランは攻めの形を作ろうとした。
75分、ペナルティエリア右手前から狙った初フリーキックは、ファーサイドへ大きく弧を描いた球の落ち際をGKに抑えられた。プレーが中断すると、ベンチのアッレグリ監督の指示を仰ぎつつ、自らチームに指示も出した。
この日、本田に最大のチャンスが訪れたのは83分だった。左サイドのモントリーボから送られたグラウンダーのパスに、ダイレクトに左足で合わせた本田のシュートがゴール右ポストを叩き、こぼれ球をパッツィーニが決めそこねると、日本の報道陣で溢れかえった記者席から大きなため息が漏れた。
故障明けながらキレあるプレーを見せたモントリーボは、86分に追撃弾を決めた後、88分にもクロスで決定機を作った。しかしバロテッリのヘディングは相手GKのセーブにあい、詰めたパッツィーニのヘッドもクロスバーを叩き、またしても決め切れなかった。