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強いバレンシアが帰ってくる!?
「身売り」は全てを解決できるか。 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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posted2014/01/08 10:30

強いバレンシアが帰ってくる!?「身売り」は全てを解決できるか。<Number Web> photograph by Getty Images

18節を終えて、7勝2分9敗で8位に沈むバレンシア。昨年末、アトレティコに0-3で敗れた後、今季就任のジュキッチを解任した。

買収案は銀行の承諾待ち。しかし悪しき前例も……。

 しかし今度はクラブ側が折れてのことなので、具体的な買収案はまもなく受け入れられ、バンキア銀行の承諾待ちとなっている。サルボ会長によると、リムが申し出たのは全借金の清算と、今月中に3000万ユーロから4000万ユーロ(約43億から57億円)かけて行なう補強。銀行は6週間後に返答するとしているが、チームを強化したいリムがオファーの有効期限を1月15日としているため、クラブは銀行側にプレッシャーをかけているという。

 変節を強いられたというプライド上の問題を除けば、バレンシアにとってはこの上ない話といえるだろう。ただ一方で、注意を促す声もある。スペインでは、外国人によるクラブ買収が好ましくない結末を迎えるケースが多々あるからだ。

 たとえば'04年ウクライナ生まれの米国人ディミトリ・ピーターマンが買い取ったアラベスでは、ピーターマンの度を越したチームへの介入が問題となり、裁判沙汰にまでなった。

 '11年1月ラシンのオーナーとなったインド人アサン・アリ・サイドは選手に給料を払わず、選手側がクラブを訴える事態に発展。未払いによる降格を避けるためラシンは破産を宣告せざるを得なくなった。

 そしてマラガでは'10年6月にクラブを買い取ったカタールの実業家アル・タニが大金を注ぎ込みCLに出られるチームを作ったものの、そこで資金難が発覚してしまい、選手も監督も大変な思いをした。

「儲けるために」バレンシアを買うということ。

 果たしてリムは信用に足る人物なのか。

 判断材料はリムの過去のスポーツ界への投資実績と、前述のバレンシア元役員セセーが彼に賭けようとした事実ぐらいしかない。セセーは自分が定めた新オーナーの条件――真剣な投資家であり、有能であり、優勝できるチームを作りつつ金を稼ぐ意志があり、継続性のある計画を立てられる――を満たしていることからリムを信頼し、中でも「儲けるために」バレンシアを買収したがっているところを評価している。バレンシアで稼ぐにはクラブのブランド力を高める必要があり、そのためにはチームを強化して毎年CLに出られるようにするのが一番だからだ。

【次ページ】 障害はあれど、背に腹はかえられない。

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