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強いバレンシアが帰ってくる!?
「身売り」は全てを解決できるか。
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byGetty Images
posted2014/01/08 10:30
18節を終えて、7勝2分9敗で8位に沈むバレンシア。昨年末、アトレティコに0-3で敗れた後、今季就任のジュキッチを解任した。
バレンシアが大きく変わるかもしれない。
去る12月、最大債権者であるバンキア銀行に「投資者を探せ」と通告され、身売りを決めたからだ。
バレンシアといえば「スペインきっての強豪」というイメージを持つ人はいまも少なくなかろう。それは国王杯優勝、2年連続CL決勝進出、2度のリーガ制覇、UEFAカップ優勝を次々と成し遂げた'90年代末から2000年代初頭にかけての印象のおかげだ。
しかし近年のバレンシアに、バルサとマドリーの2強と対等に争っていた当時の勢いはない。10位まで落ちた'07-'08シーズンからこちら、順位こそCL/EL出場圏内を保っているが、国内でも欧州でもタイトルを狙う力がないのは明白である。
バレンシアが坂を転げ落ちるように力を失っていったのは、お金のせいだ。転機はビクトル・フェルナンデス率いるポルトを破り欧州スーパーカップの王者となった'04年の秋の会長交代。
不動産デベロッパーを本業とするフアン・ソレール新会長は、スペイン経済のバブルにあてられていたのか、チーム強化に大金をかけ、選手に高額年俸を与えた上、新スタジアムの建設まで始めてしまった。
その結果、'08年の時点で債務は約5億5000万ユーロ(現在のレートで約780億円)にまで膨れあがり、首が回らなくなったクラブは資本増強の他、“強さの源”を年々売却せざるを得なくなった。即ちビジャにシルバにマタ。ジョルディ・アルバにイスコ。2013年の夏はソルダードを売った。おかげで負債額は3億5400万ユーロ(約502億円)まで減ったが、バレンシアは魅力と威力の少ないチームに成り下がってしまった。
バレンシア買収に手を上げたのは、シンガポールの富豪。
だが、今回の身売り話がうまくまとまれば、バレンシアが黄金期の強さを取り戻す可能性は十分にある。
そして、それを現実にすると約束している買い手もすでに現れている。サッカークラブへの投資を目論むシンガポールの富豪ピーター・リムである。
アトレティコの買収を考えたこともあるリムとバレンシアはすでに過去2回接触している。最初は2013年の2月、ヨーロッパまでやってきたリムがジョレンテ前会長にオファーを示したが、身売りを拒むバレンシア側が拒否した。2度目は9月、シンガポールでF1グランプリが行なわれた際、バレンシアの元役員アントニオ・セセーが買収を持ちかけたが、依然クラブが身売りを拒んでいたため、話はまとまらなかった。