プレミアリーグの時間BACK NUMBER
ベイルの穴は180億でも埋まらず?
ビラスボアス、“2年連続”の解任劇。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2014/01/01 08:01
リバプール戦後、失意の内にピッチを後にするビラスボアス。翌日クラブから解任が発表された。
アデバヨール、デフォーというFWの人心掌握失敗。
ダニエル・リービー会長をはじめとするクラブ経営陣は、大敗と順位急降下という結果だけではなく、マンC戦の内容からもビラスボアス体制への不信感を強めたに違いない。選手の心離れが垣間見られたからだ。
テレビ解説を務めていたガリー・ネビルは、キックオフの笛が鳴った時点で、トッテナムに戦闘準備が整っていなかった事実を指摘している。相手もボールも見ていない選手が4名もいたのだ。キックオフ13秒後に生まれたマンCの先制点は、GKユーゴ・ロリスのミスによるものだが、戦前のプランが何であったにせよ、先発イレブンには、ビラスボアスの指示を実行に移す意識すら欠けていたと言える。
ベンチに関しても、ムードの悪さが心配された。ビラスボアスは、ハーフタイムを境に、エマニュエル・アデバヨールを前線に投入した。指揮官とは犬猿の仲と言われ、戦力外扱いされていたFWだ。
この人間関係だけでも問題だが、ベンチにはジャーメイン・デフォーという選択肢もあった。トッテナム通算11年目のベテランは、ロベルト・ソルダードの加入により、昨季のエース格から、今季はバックアッパーに格下げとなった。ビラスボアスのチェルシー時代、スタメン落ちに「説明がない」と不満を漏らしたのはフランク・ランパードだが、トッテナムでのデフォーに、使われない理由が説明されていたかどうかは怪しい。
新エースのソルダードは、最前線で孤立する姿が目立つ一方で、第16節終了時点でPK3本を含む4得点留まり。エリクセンの戦線離脱や、エリック・ラメラやナセル・シャドリといった新2列目要員の低調という理由があるにせよ、巷では、デフォーをベンチに追いやる資格はないと言われてもいた。
選手だけでなく、右腕だった助監督とも距離が。
さらにチームスタッフ内では、序盤戦から不穏な空気が漂っていた。昨季のトッテナムでは、ビラスボアスの隣にシュテファン・フロイント助監督という、ベンチでのツーショットが定番だった。ホームでの最終節も、筆者のいた記者席前方には、ベンチで監督と頻繁に意見を交換し、ピッチ上で不利な判定が下る度に、第4審判に食って掛かるフロイントの姿があった。しかし、今季初めてホワイト・ハート・レーンを訪れた第6節、監督と助監督の間には他のスタッフ2名が座っていた。両者の間には、アーセナルに敗れた第3節での意見の不一致を機に確執が生じ、その後も、ベンチの席順が示すように距離が遠くなったままだった。