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ベイルの穴は180億でも埋まらず?
ビラスボアス、“2年連続”の解任劇。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2014/01/01 08:01

ベイルの穴は180億でも埋まらず?ビラスボアス、“2年連続”の解任劇。<Number Web> photograph by AFLO

リバプール戦後、失意の内にピッチを後にするビラスボアス。翌日クラブから解任が発表された。

記者会見で思わず口をついたクラブ批判で、完全に孤立。

 こうした状況に、敏腕経営者のリービーが目を瞑り続けるはずがない。見切りをつけることになったリバプール戦は、ホームでは16年ぶり最悪の大敗でもあった。対戦相手は、前線のダニエル・スタリッジ、中央のスティーブン・ジェラード、最終ラインのホセ・エンリケと、攻守に主力を欠いてもいた。しかも、そのリバプールを圧勝に導いたブレンダン・ロジャーズは、一昨季、トッテナムがスウォンジーからの引抜きを検討していた人物だ。スタンドの役員席にいたリービーは、惨敗の屈辱に人選を誤った後悔が加わり、堪え難い心境だったことだろう。

 その上、ビラスボアスは、試合後の会見で会長の逆鱗に触れた。開口一番にリバプールの出来を讃えた声は震え気味で、目線も定まらず、自身の身を案じていると見受けられた。立て直しに必要な時間を問われただけで、「辞任はしない」と答えてもいる。だが、この発言が会長への「命乞い」だったとすれば、自ら一縷の望みを絶ってしまうような、会見終盤の言動は避けるべきだった。

 結果的に不振を招いた大型補強は、監督ではなく、フットボール・ディレクター主導の下に行われたという見方が強かったことから「今季のチームは自分のチームなのか?」との質問が飛んだ時のこと。ビラスボアスは「言ってしまっていいのかどうか」と切り出したところで言葉を濁した。

 最終的には「トップ4級の戦力が揃っている」と、無難な答えを口にしたのだが、その前の一言と一瞬の沈黙は、必ずしも監督の意向に沿った補強でなかったと示唆するもので、クラブ批判も同然。選手よりも助監督よりも、敵に回してはならないはずの会長を、完全に敵に回す恰好となった。

3度目の正直を目指す機会は与えられるのか。

 ビラスボアスを切ったトッテナムは、新監督候補として、ベテランでは、グレン・ホドルとファビオ・カペッロの元イングランド代表監督2名から、若手では、スウォンジーのミカエル・ラウドルップとサウサンプトンのマウリシオ・ポチェッティーノの両プレミア監督まで、複数の名前が挙る中、ひとまず、育成の主担当だったティム・シャーウッドに暫定指揮を任せた。トッテナムの元MFは、監督初挑戦ながら現主力からも一目置かれる存在。若手には親近感を持たれていることから、人心掌握面での利点がある。

 当人は、「自分で決められるなら10年契約を結ぶね」と、続投に意欲的でもあった。初采配となったリーグカップ準々決勝、敗れはしたが、チームは、前監督下で冷遇されたアデバヨールとデフォーの2トップで、気分一新の再出発。続くプレミア第17節では、アデバヨールの2ゴールを含む3得点でサウサンプトンを下し、2年ぶりのトップ4を目指して再起への第一歩を踏み出した。シャーウッドが、来季末までの正監督に昇格したのは、その翌日のことだった。

 一方、2年間で2度目の解雇を告げられたビラスボアスは、プレミアで3度目の正直を目指すのであれば、3度目の過ちは禁物の覚悟で、トップ4候補以下のクラブを再起の舞台に選ばざるを得ないだろう。全く以て、残念だ。

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