フットボール“新語録”BACK NUMBER
「終わりよければ、すべて良しです」
久保裕也がACミラン戦から得たもの。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byAFLO
posted2013/12/26 10:30
12月1日のバーゼル戦、久保裕也は1-2と1点ビハインドで迎えた後半23分に、利き足ではない左足で豪快な同点ゴールを決めた。
ゴールよりも、先発出場にこだわる1年目。
ただし、新しい環境に適応する一方で、ゴールから遠ざかった時期もあった。
リーグの3節に2得点、4節に1得点を決め、スイス杯の1回戦と2回戦でもゴール。爆発的なスタートを切り、スイスリーグの人気選手の仲間入りを果たした。ところが、9月14日のスイス杯2回戦を最後に、ネットを揺らせない日々が続いていた。
そのとき久保が抱えていたのは、ゴールへの渇望より、なぜ先発じゃないのかという葛藤だった。
「いや、ゴールについてはあまり気にしてなかったですね。ゴールっていうのは、取れるときは取れるし、取れないときは取れない、っていうふうに前から思っているので。ただ、途中出場が続いていたので、最初から出たいとは思っていました」
フォルテ監督はゲームの立ち上がりはフィジカルを重視しており、トップ下には身長188cmのフレイを起用している。そしてフレイに代えて久保を投入し、攻撃のギアを上げるというのが毎試合のパターンだ。今季の公式戦で久保が先発したのは、8月のアーラウ戦など3試合だけ。フォルテ監督が「移籍1年目にユウヤを燃え尽きさせてはいけない」と語るように、期待のタレントを大切に起用しているという面もあるが、本人からしたら物足りなさがあっただろう。
ACミランとの練習試合で掴んだ手応え。
だが、それでも久保は一歩ずつ前進を続けていた。
大きな手応えを得たのは、Aマッチウィークの11月16日に行なわれたACミランとの練習試合だった。フレイがスイスU-21代表で不在だったこともあり、久保はトップ下で先発。カカ、マトリ、エマニュエルソン、ボネーラらと勝負するチャンスを得た。
久保はこう振り返る。
「ACミラン相手に、割とできたという感じがありました。あんまりシュートまでは行けなかったけど、その前のところで結構うまくできたから。かなり自信になりましたね」
その約2週間後、ついにゴールの門が開く。