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Jのトライアウトは非公開・交渉重視?
伊東輝悦ら73人の、長い1日に密着。
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph bySatoshi Shigeno
posted2013/12/18 11:35
トライアウトでも、チームの中心で堂々としたプレーを見せた伊東輝悦。過去にトライアウトには、三都主アレサンドロや、市川大祐、廣山望などが参加したこともある。
村井慎二、黒部光昭、伊東輝悦ら、元代表組も参加。
多士済々の関係者233人の前で、トライアウトに臨んだ選手は73人。村井慎二や黒部光昭らの日本代表経験者、そして来年からJリーグに導入される東南アジア枠での入団を見据えたタイ、ベトナム、インドネシアの外国籍選手が初めて参加した中、最年長は39歳の伊東輝悦だった。
1996年のアトランタ五輪・ブラジル戦で殊勲の決勝点を挙げたことで一躍有名になった伊東は、2013シーズン終了時点でのJ1リーグ戦出場試合数がフィールドプレーヤーとして歴代最多の517。今年で20周年を迎えたJリーグの“鉄人”と呼ぶべき存在だ。
'90年代から'00年代の清水エスパルスを支え続けたボランチは、チームの若返り策に伴って'11年にヴァンフォーレ甲府へと新天地を求めた。昨年は自身初となるJ2での戦いとなったものの、2シーズンで53試合のリーグ戦に出場していた。
しかし甲府がJ1復帰した今シーズンは、ケガもあってなかなか出場機会をつかめなかった。リーグ戦初出場は7月6日の第14節・浦和レッズ戦。この日の伊東は中盤の底として先発出場し、好調をキープしていた浦和の攻撃をブロックし続けた。
「500試合以上の経験があるからこそ、バタバタしない。彼に対しては敬意を表したいですし、今日もしっかりとプレーしてくれたことを嬉しく思います」
前節で退席処分になった城福浩監督に代わって、この日指揮を執っていた渋谷洋樹コーチは、伊東の働きを称賛した。
「シンプルな理由だけど、サッカー選手をまだ続けたいから」
それでも伊東のリーグ戦出場は6試合とプロ入り2年目、'94年以来の1ケタに終わり、クラブは今季限りでの契約満了を通告した。
その後の伊東の決断は早かった。
「トライアウトを受験することは、割とすぐ決めましたよ。シンプルな理由だけど、サッカー選手をまだ続けたいから。そのためにはまずトライアウトを絶対受けないといけないな、と思いましたから」
トライアウトはほとんどの選手がチームメートではない急造チーム。来年の所属先を手にしようと気負いが見られるプレーヤーもいる中で、伊東は「いつも通り」のプレーをこなしていく。最終ラインでのボール回しをフォローすることでサイドバックの攻撃参加を促し、巧みなポジショニングで相手のカウンターアタックを未然に防いでいた。
そして冒頭に記したサイドハーフの惜しいオフサイドシーンは、伊東のビルドアップから小気味よく展開されたボールだった。