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2勝目の村田諒太、未だ発展途上。
世界への“3年間”を人は待てるのか。
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byAP/AFLO
posted2013/12/09 11:45
世界への長い道を歩き始めたばかりの村田諒太は1月で28歳になる。対戦相手とともに時間とも戦う金メダリストは、勝利後のインタビューで「不細工な試合をしてすいません」と観客に詫びていた。
ミドル級の世界王者は、軽量級とは全く意味が違う。
国内選手の世界タイトル獲得最短記録は井岡一翔(井岡)の7戦目。いま井上尚弥(大橋)がこれを抜こうかとしている。ただし誤解を恐れずに言えば、これはあくまで軽量級の世界の話。世界的に層の厚いミドル級はそういうわけにはいかないのである。
現在ミドル級周辺で活躍している元トップアマの選手がどれくらいの時間をかけて世界王者になったかを見れば一目瞭然だ。アテネ五輪銀メダリストのWBA王者ゲンナジー・ゴロフキンが世界タイトルを獲得したのはデビューから4年半の19戦目。シドニー五輪ドイツ代表だったIBF王者フェリックス・シュトルムは2年8カ月(18戦目)。アテネ五輪金メダリストでWBAスーパーミドル級スーパー王者のアンドレ・ウォードは4年11カ月(21戦目)を要した。
村田はいまのところ2014年に4試合を予定している。そうなると来年を終えた時点でプロ6戦。再来年に4戦しても10戦にすぎない。試合数を飛躍的に増やせず、かつ世界挑戦をあまり先延ばしにできない状況を考えると、村田にとって一戦一戦がいかに貴重なものか分かるだろう。試合翌日の記者会見で村田は次のように語った。
「(今年1年を振り返って?)今年はあと20日ちょっとあるので今年を振り返るにはまだ早い。あと20日ちょっとでも成長できると思う」
五輪金メダリストに与えられる猶予期間はそれほど長くはなさそうだ。収穫の第2戦は終わった。3戦目は2月22日、中国マカオにセットされている。