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大物外野手2人を獲得のヤンキース。
トレード濃厚のイチローの来季を占う。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/12/07 08:01
2013年は162試合中150試合に出場し、打率.262、136本のヒットを放ったイチロー。来季はどんなプレー、どんな活躍を見せてくれるのだろうか。
レッドソックスからは「大駒」を引き抜き。
もっともアグレッシブな補強は、エルズベリーの獲得だ。
ワールドシリーズ優勝のレッドソックスからトップバッターを引き抜き、相手の戦力をダウンさせて、自軍に引き入れた。将棋でいえば相手の大駒を取って「さて、どこでどう使おうか……」と考慮中のような状態だ。
エルズベリーの獲得を見ると、
「やっぱりヤンキースだけは違うな」
と感じる。
ブリュワーズのように、人材をトレードのコマとして有効活用しようとか、そういった了見はあまりない。
イチローは保険としての活用が濃厚か。
そうなると、イチローにも影響が出てくる。来季のヤンキースの外野は、
レフト ブレット・ガードナー
センター ジャコビー・エルズベリー
ライト アルフォンソ・ソリアーノ
でほぼ確定。
イチローはといえば、4番手の選手である。「トレード説」も出ているが、私の見解としては、ライアン、ジョンソンの獲得からも明らかなように、ヤンキースの姿勢として「保険」をかけるのが、ひとつの方針になっている。
イチローは、保険だ。
2013年のヤンキースは、外野のグランダーソンやガードナーも故障に見舞われ、イチローがその穴を埋めた。
イチローの特徴は、ケガをしないことにある。故障が相次いだ時に、これほどありがたい選手はいない。
おそらく、ヤンキースはイチローを控えの選手として活用していくはずだ。誰かがケガをすれば、安心してオーダー票に書きこめるし、守備、走塁も任せられる。
ヤンキースは、本当に贅沢だ……。
<追記>
原稿執筆時点から、情勢が大きく動いた。まったく反することを書くが、イチローはトレード要員となった。
なぜか? ロビンソン・カノーがマリナーズと契約したことによって起きる「ドミノ効果」のためである。
ヤンキースはおよそ170億円規模の資金を、カノーとの再契約のために準備していた。200億円以上は出さない。これはアレックス・ロドリゲスとの契約で学んだ球団の姿勢だった。
そのカノーが去ったことで、余った資金はカルロス・ベルトランに向かった。
これは予想外の動きだった。エルズベリーの獲得によって、もう外野手は獲得しないと思っていたからである。今季、ポストシーズンに進出できなかったことで、ヤンキースはなりふり構わぬ補強に打って出ている。そこまで“desperate”、必死の状況だとは私も読み切れなかった。
現状では、イチローは5番手の外野手となった。内野にケガ人を多く抱えるヤンキースにとっては、内野により多くの保険をかけておきたい。イチローはトレード要員となるだろう。
報道では、サンフランシスコ・ジャイアンツが興味を持っているようだ。可能性は大いにあるのではないか。12月9日から始まるウィンター・ミーティングに注目だ。