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“戦力外”ながさわたかひろが個展?
「これは野球美術家のトライアウト」
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byHidenobu Murase
posted2013/12/04 10:30
神楽坂のギャラリー「eitoeiko」で個展を開催中のながさわたかひろ。
これは、生き方も含めたコンセプチュアルアートなのか。
実にいい話風にまとめられているが、冷静に考え直してみると、そもそものやっていること、言っていることはムチャクチャなのである。
だが……なぜだろう。ながさわの狂気的な熱情は、常識という概念を無理矢理侵食して心に迫ってくる。
筆者は中学3年間、美術1だったのでよくわからないが、これが芸術というもの、ながさわの生き方も含めたコンセプチュアルアートというものなのだろうか。評価されないところ、食えないところ、辞めようとしたけどやめられないところも含めての。
「金では買えない、チームの一員ですよという称号」
11月、原宿。
結局、スワローズは最下位のままシーズンを終えた。その挙句、ある意味での戦力外通告を受け、失意と迷いの中にいたながさわは、女子大生野球芸術ユニット「代打〇〇〇」のグループ展を訪れると、そこで新たな刺激を受けた。
芸術と野球の可能性。そして、ヤクルトという球団への、野球への、純粋な愛情。
「素晴らしかったですよ。若いうちはいろいろとやればいいんです。彼女たちが出てきてくれたことはね、僕にも励みになりましたよ。僕が野球芸術の分野で先達にならなければ、というね。
“選手になりたい”、“背番号が欲しい”、そう言い続けてきたことは、僕だけの欲求じゃないんですよ。様々なジャンルで、東京という街のあちこちで、スワローズを応援する人たち、チームの力になっている人たちに、金では買えない、チームの一員ですよという称号が何かあればいいなと思うんです。芸術、音楽、どんなものでもいい。街のあちこちでスワローズを応援する人たちが出てきたら、新しい文化の盛り上がりが起こるかもしれない。生活や地域と野球がより密接な関係を作れるかもしれない。選手のオリジナルテーマを作っている作曲家、スワローズの油絵を描いている画家がいれば、拾い上げるべきなんです。そうすれば野球に興味のなかった人が、ひとりでもスワローズに興味を持ってくれるかもしれない。それは芸術も同じことなんですよ」
美術館に行ったところで、見方がわからず光の速さで出てきてしまう筆者にとって、芸術はものすごく敷居が高い。だが、それは野球を知らない人が球場に行くことも同じだとながさわは言う。