欧州CL通信BACK NUMBER
CL同組にイタリア人名将3人の椿事!
三者三様のサバイバル模様を読む。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byAFLO
posted2013/11/08 10:30
マドリーのアシスタントコーチを務めるジダン(右)とコンテ(左)はユベントス時代のチームメイトでもある。そして、その2人がいるユベントスで、アンチェロッティは指揮を執っていた。
好人物の顔に隠れる勝負師としての凄み。
それでも、CLの戦い方を熟知するアンチェロッティは落ち着き払っている。
ACミランを率いた'03年、オールド・トラッフォードで自身の古巣ユーベを倒し、初めて欧州の頂点に立ってから、ちょうど10年。その間に随分と白髪は増えたが、スクデットと2度目のビッグイヤーを獲り、海を渡ってチェルシーの監督としてプレミア王者となると、PSGではリーグ・アン優勝も果たした。
天文学的数字の移籍金や年俸にも萎縮せず、これまでもスター軍団を必ず“自分のチーム”にしてきた。欧州と伊英仏3国を制したアンチェロッティの実績に敬意を払わない同業者はいない。
「カルロこそ世界最高の監督の一人だと思う。あらゆる国でタイトルを獲ってきた彼のキャリアは驚異的だ」(グアルディオラ)
健啖家のアンチェロッティは、たぶん世界で一番ウールのセーターが似合うサッカー監督だ。好人物のままでの勝ち抜けが濃厚なグループリーグの段階では、まだ勝負師の凄みを見せてはいない。
闘将コンテが虎視眈々と狙うCL制覇の夢。
ユベントスを率いる監督アントニオ・コンテにとって、CLは「追うべき夢」だ。
現役時代、決勝戦で2度敗れたトラウマは深い。軽々しく「優勝したい」とは口にしないが、狂おしいまでのビッグイヤー願望は、闘将の言動に見え隠れする。
昨季大会の準々決勝でバイエルンに完敗し、コンテとユーベは、現在の欧州トップクラブとの間にある彼我の差を知った。
今季同組のマドリーは、クラブ総売上高でユーベのほぼ2倍のビジネススケールを持つ。コンテは「資金力の差を埋めるのは容易なことではない」と強調しつつも、他の2クラブとの力関係を鑑みてグループリーグ突破に自信をもっていた。
緒戦から躓き、闘将の野望は早くも瓦解!?
ところが、グループBで最も力が落ちると見られていたコペンハーゲンとの開幕戦で、予想外の1失点ドローに終わると、つづくホームでの2節ガラタサライ戦でも守備の脆さをさらけ出し2失点献上。2戦連続ドローのセリエA王者は、昨年に続いて“CL恐怖症”に陥り、コンテの描いていたプランは大幅に狂った。
首位レアルとの2連戦を前に危機感を露にしたコンテは、3バックから「4-3-3」へ急遽布陣変更を行い、守備陣へショック療法を施した。
敵地での3節マドリー戦で新布陣は機能したが、厳しい判定にも泣かされ黒星。攻めに転じたトリノでのリターンゲームでもリードを奪うに至らず、4試合を終えて得た勝ち点はわずか「3」で、グループ最下位に沈んだ。