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<欧州蹴球紀行・赤い悪魔を訪ねて> ベルギー ~サッカーと僕たちの幸福な関係~
text by
近藤篤Atsushi Kondo
photograph byAtsushi Kondo
posted2013/11/11 06:00
ウェールズ戦終了後、金網越しに選手たちと盛り上がるサポーターたち。この幸福感! 12年ぶりのW杯出場、ずいぶんと待たされたが、待った甲斐があっただけの結果を、ベルギー代表はブラジルで残してくれるかもしれない。
そんな噂が聞こえてくるものの、実態はよくわからないまま。
FIFAランク急浮上の理由を探しに訪れた地で見つけたのは、
サッカーをめぐって織りなされる、稀有でハッピーな光景だった。
「サッカーの記事を書き始めたのは1983年からです。その後約20年間、ベルギーにとってW杯に出場するのはごく当たり前のことでした。ところが2002年を境に、この国のサッカーは一気にダメになった。原因は世代交代の失敗、それに尽きると思います。この11年間、まあきつかったですよ。今日は何点取って勝つのだろう、ではなく、今日は何点取られて負けるのだろう、と考えながらスタジアムに向かっていたのですから。でもその分、今は代表チームにずいぶん楽しませてもらっています」
(ルディ・ヌイエンス ヘット・ラースト・ニュース紙記者 56歳)
セルビア対日本戦の翌々日、ベオグラードからフランクフルトに飛び、空港駅から西へ向かう電車に乗った。ブリュッセルのミディ駅に着いたのは夜の11時前、外では冷たく細い雨が降っていた。
アフリカ、アジア、様々な国からの移民の男たちがたむろする東口を抜け、ホテルまでの道を歩き始める。数百m行くと、北アフリカ系の怪しい男が英語で「ミスター、ミスター、あんた鳥のフンがついてるよ!」と後ろから声をかけて来た。彼らは旅行者(あるいはときに地元住人)の後ろから白い塗料を振りかけ(実際それは鳥のフンによく似ている)、相手が驚いて立ち止まると、親切にその汚れを拭くふりをして、ポケットの中の財布をすったり、もっと悪質な場合は、物陰からわらわらと男の仲間が出てきて、荷物をかっぱらわれることになる。