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稲本潤一はJ復帰で何を変えたのか?
海外組復帰の難しさと2年目の課題。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byAZUL/AFLO
posted2010/12/22 10:30
ベンゲル監督のアーセナルを初めとして、フラム、WBA、カーディフ、ガラタサライ、フランクフルト、レンヌと多くの海外チームでプレーしてきた稲本も、日本の夏の蒸し暑さだけは別格と語る
今年、フランスのレンヌから9年ぶりに日本に復帰し、川崎フロンターレでプレーした稲本潤一。2010シーズンは本人曰く「まぁまぁ」と言うように、無難にプレーはできていたが、突出した活躍を見せるまでには至らなかった。
これまでも海外から帰国した選手は、すぐに活躍するのが難しいと言われていた。実際、2008年にドイツから復帰した同世代の高原直泰は浦和で満足できるような結果を残せなかった。
海外でプレーしていた選手が日本に復帰し、即活躍するのはなぜ難しいのか。
帰国後、ブランクを感じさせずにプレーするのは、どうしたらいいのか。
稲本の復帰1年目のプレーを振り返りながら考えてみたい。
「自分の持味となるプレーは、何ら問題なく出せていたと思う」
稲本は、そう言った。
「例えば、自分のタイミングでボールを取りに行けば、ほぼ100%ボールを取れた。体の当たりも欧州よりも緩いし、自分のプレーとして戸惑うことはまったくなかった」
プレーそのものには問題はなく、イメージ通りやれた。では、どういう部分に難しさを感じていたのだろうか。
日本の異常な“蒸し暑さ”の中で90分間走り続けるのはムリ!?
春先は動きが良かったが、W杯後、夏に入ったあたりからゲ-ムの後半になると極端に運動量が落ちた。環境面での課題が出てきた、ということらしい。
「身体が日本の夏の暑さに対応できなくて、ほんまにキツかった。だから、夏のゲームは、後半途中でバテることが多かった。毎試合90分、走ってプレーするのは絶対にムリやとも思ってましたもん」
欧州の夏も同じように暑いのだが湿気は圧倒的に少なく、試合中のダメージが少ない。だが、日本の夏は頭では分かっていても独特の蒸し暑さがあったという。特に今年は異常気象の影響もあったせいかとにかく蒸し暑かった。そのために、コンディションを維持するのが難しかったという。
また、日本のピッチは欧州と比較すると硬い。
芝の下の土が柔らかく、軸足が流れるような欧州のピッチと比較すると、踏み込んだ時の衝撃度がまったく異なる。つまり、足全体に強力な負荷がかかるということだ。