Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ナビスコ決勝は浦和有利の下馬評も、
策士ネルシーニョに“奇策”の気配。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/11/01 10:30
天皇杯を優勝、今年のACLでも日本勢最高のベスト4とトーナメントでの戦いに強さを見せるネルシーニョ。ナビスコ決勝にも、奇策を用意しているのだろうか。
普通に見れば「浦和優位」は動かないが。
素直に2チームの比較をした場合、ここまでの流れを見ると、「浦和優位」との印象が強くなる。
浦和は昨季から、柏に対しては4戦4勝と相性がいい。
このところのチーム状態も良好で、控えメンバーで臨んだ10月16日の天皇杯3回戦こそ敗れたが、それを除けば公式戦4連勝中。川崎フロンターレとのナビスコカップ準決勝第2戦などは、出色の出来だった。その前2試合も引き分けているから、公式戦では6試合負けていない。
出場停止で前哨戦を欠場した興梠慎三と森脇良太がファイナルでは戻ってくるので、柏と違ってベストメンバーで決勝を戦えるのも優位を感じさせる要因だ。
今季、柏から4ゴールを奪っている柏木は「相手どうこうというより、自分たちのサッカーができれば、自ずと優勝は見えてくると思う」と自信を覗かせる。
「大一番での勝負強さ」でタイトルを手にしてきた柏。
一方、柏は前述の大谷に加え、左ウイングバックの橋本和も出場停止。ようやくチームに合流したばかりのレアンドロも、どれぐらいプレーできるのか、やってみなければ分からない。
浦和と今季は分が悪いことに加え、チーム状態も決して良いわけではない。ACLによる過密日程という事情があったにせよ、9月7日に横浜F・マリノス戦に勝利したあと、公式戦で8試合も白星から見放された。天皇杯の岡山戦でようやく暗いトンネルから脱し、J1第29節の甲府戦で2連勝を飾ったものの、会心の勝利とはとても言えない内容だった。
ただし、「大一番での勝負強さ」に焦点を当てれば、別の見方もできる。
柏はこの3シーズン、J2優勝、J1優勝、天皇杯制覇とタイトルをもぎ取ってきた。'11年にはクラブワールドカップにも出場し、チームとして経験を積んだ。
その点、'07年のアジア制覇以来、タイトルを手にしていない浦和には不安が残る。ペトロビッチ監督も、J2では優勝したが、三大タイトルは奪えていない。
そう考えると今季の浦和が、タイトル獲得経験のある興梠、森脇、那須大亮を獲得したという事実が興味深い。果たして彼らは、その勝者のメンタリティで浦和にタイトルをもたらすことができるだろうか。