Jをめぐる冒険BACK NUMBER
ナビスコ決勝は浦和有利の下馬評も、
策士ネルシーニョに“奇策”の気配。
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byAFLO
posted2013/11/01 10:30
天皇杯を優勝、今年のACLでも日本勢最高のベスト4とトーナメントでの戦いに強さを見せるネルシーニョ。ナビスコ決勝にも、奇策を用意しているのだろうか。
戦術を語らない監督が多い中、手の内を明かした理由は?
たしかに、柏の3-4-2-1を見ていると、大谷の果たす役割が大きいことがよく分かる。
後方からビルドアップする際には、大谷が左サイドバックのポジションを取り、攻撃の起点になっている。ボールを敵陣に運んだあとはポジションを上げ、前線に飛び出すことも少なくない。工藤のゴールをアシストした場面や、自身のシュートがポストに嫌われた前半32分の場面がそれだ。
指揮官も言うように、攻撃時にボランチの大谷が左サイドバック、3バックの右の鈴木が右サイドバックになって4バック気味にすることで、ウイングバックの二人は一層高いポジションを取れるようになる。サイドと前線に人を割き、プレッシャーに遭いにくいサイドの深い位置から攻撃を繰り出す狙いが見て取れた。
……と、そこで思ったのは、なにもナビスコ杯決勝戦の直前に、自ら手の内を明かす必要もないだろうに、ということだった。
監督の中には、戦術面の質問に対し「次の対戦が控えているので……」と、一切答えない人も少なくない。むしろ語ってくれる監督のほうが珍しく、ネルシーニョのような監督は取材者からすれば、実に有難い存在だ。
浦和も分析済みに違いないから、明かしても大した問題ではないのかもしれない。だが大一番を前にして、進んでお人好しになる必要もないだろう。
大谷の出場停止、そしてレアンドロの復帰。
思い返せば、前節の甲府戦の後も「3バックを採用する理由」を説明していた。
こうして強調されると、怪しく思えてくるものだ。なにせ発言の主は、策士ネルシーニョである。もしかして決勝では4バック? そこまでの変更はないにしても、懐には何か秘策を隠し持っているのではないだろうか、と勘ぐりたくなってしまう。
システム変更を含め、何か策を用意しているように思えるのには、ワケがある。
ひとつは、現在のシステムのキーマンである大谷が出場停止のため、決勝戦に出られないことだ。
おそらく茨田陽生が代わりに先発することになるだろう。大谷の武器が守備力やツボを抑えたポジショニング、前線へのダイナミックな走りにあるのに対し、茨田の魅力は卓越したパスセンス。その攻撃面での能力を生かそうとすれば、3-4-2-1で大谷が果たした役割と同じことを、この若き司令塔に求めるのが得策なのか、疑問が生じる。
もうひとつの理由は大黒柱、レアンドロ・ドミンゲスの復帰である。