セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
695日ぶりのゴールで完全復活。
ロッシがセリエ得点王を独走中。
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byANSA/AFLO
posted2013/10/23 10:30
2年間の鬱憤を晴らすかのようにゴールを量産するロッシ(左)。まだ26歳、失ったものを取り戻す時間は存分にある。
復帰時期も定かでないロッシに、オファーが届く。
すぐさま靭帯の再結合手術が施されたが、完治させるには半年後に再び右膝を開かねばならなかった。秋になり、3度目のオペは成功したが、復帰にはさらに最低6カ月を要した。ロッシを欠いたビジャレアルは2部へ降格していた。
くり返された怪我と無限にも思えたリハビリ。チームの降格と肉親との死別――。
度重なる逆境に、ロッシの心はなぜ折れなかったのか。
専門家によるリハビリメニューをこなすため、ロッシは慣れ親しんだ米国ニューヨークへ一時移り住んだ。そこで範としたのは、やはり怪我から復活したコービー・ブライアント(L.A.レイカーズ/NBA)のアメリカン・ネバーギブアップの精神だった。
「過去は見ない。今日を生きる先に道は開ける」
昨冬、まだ復帰時期も定かでなかったロッシに、フィレンツェからオファーが届いた。意気に感じたロッシはイタリアへ帰還することを決めた。亡き父の生まれた年にちなんだ背番号をもらうと、昨季の最終節で公式戦復帰を果たした。だが、FWの真の復活とは、やはりゴールを決めたときだ。
695日ぶりのゴールで、ロッシの時間は動き出した。
2-1で快勝したカターニャとの今季開幕戦、ロッシは右足で先制点を蹴りこんだ。ビジャレアル時代に決めた最後のゴールから、実に695日という時間が過ぎていた。
ようやく、ロッシの時間は再び動き出した。
夏に新加入したばかりの大物FWマリオ・ゴメスが、3節カリアリ戦で右膝を負傷、長期離脱に追い込まれると、監督モンテッラはこれまでチーム作りのベースになってきた「3-5-2」をゴメス復帰まで封印し、「4-3-2-1」など変化をつけた戦術へスイッチした。前線のスペースの使い方に優れるロッシは1トップに置かれたことで、持ち味のアジリティをより生かせるようになった。
「自分が取り戻さなくちゃいけないのは、最初の10mの爆発力」と完全復活への課題を挙げつつ、ロッシは2年の間に溜め込んでいたエネルギーを一気に発散し始めた。