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スパルタクで上を目指すドリブラー。
U-18ロシア代表、篠塚一平の決断。
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShinya Kizaki
posted2013/10/18 10:31
スパルタクIIとスパルタク・リザーブに所属している篠塚一平。たびたびトップチームの練習に呼ばれていることからも、周囲の期待の高さが窺い知れる。
カルピン監督に目をかけられ、トップ合流も近い。
生活環境も変わった。篠塚はモスクワ郊外のトップチームの練習場にある寄宿舎に移り住み、3人部屋での生活をスタートさせた。
「母と祖母がいるモスクワ市内の家に帰るのは、練習がオフの日くらい。寄宿舎にはトップの選手が使う食堂があって、朝から夜まで好きな時間に、好きな物を食べることができる。だから食生活はかなり恵まれていると思います」
ロシア2部の4節で篠塚はプロデビューを果たした。まだスパルタクIIのレギュラーの座を取るまでには至っておらず、リザーブの試合に出ることも多い。だが、クラブの強化部から求められている「大人のフィジカルへの適応」という課題を少しずつクリアしてきている。
だからだろう。篠塚はトップチームのカルピン監督から声を掛けられ、トップの練習に参加する機会も増えてきた。
スパルタクは石油会社『ルクオイル』の副社長がクラブの会長を務めており、資金力はリーグトップクラス。昨季ブレイクしたアルメニア代表FWのモフシシャン、元ドルトムントのパラグアイ代表FWバリオス、元シャルケのスペイン人MFフラド、アルゼンチン代表経験があるMFティノ・コスタ、アヤックス出身のアルメニア代表MFオズビリズなど、豪華な外国人選手が顔を揃えている。競争も激しく、昨季主力だったブラジル人FWのアリとナイジェリア代表FWのエメニケはチームを去った。
アンダー年代はロシアで、いずれは日本代表で。
「トップの練習に入って差を感じるのは、やっぱりフィジカル。もっともっと当たりに慣れていかないと。個人的にはドリブラーが気になるんですが、その点で驚かされたのはスペイン人のフラド。ドリブルの切り返しが深くて、すごく参考になりました」
今年1月にロシアU-18代表にデビューして以来、篠塚は同代表には招集されていない。だが、確実にそのグループには入っており、来年ハンガリーで開催されるU-19欧州選手権に向けた30人のメンバーにリストアップされ、10月にはそのためのメディカルチェックを行なった。
「ロシアは自国開催の2018年W杯に向けて、すごく若手育成に力を入れている。その波に乗って、どんどん上を目指していきたい」
将来、日本代表でプレーするという夢は変わらないが、アンダー年代の間はロシア代表として経験を積むつもりだ。スパルタクIIの先発定着、そしてその先にあるトップ昇格を目指して、篠塚は異国の地で戦い続けている。