ブンデスリーガ蹴球白書BACK NUMBER
強さの陰で選手に大きな負担が……。
“野戦病院”ドルトムントの正念場。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/10/16 10:31
続出する故障者を抱え、ローテーションどころか満足なメンバーを揃えることに苦戦するクロップ。強豪を率いる本当の戦いは、ここから始まるのかもしれない。
強さの秘密と、故障の原因は表裏一体。
中でも問題視されているのが、ボランチの選手たちの怪我だ。定員2のポジションにレギュラー級の選手が4人もおり、開幕前にはドルトムントで最も層の厚いポジションだったが、リーグ中断期間中には無傷の選手がいなくなってしまった。チームの心臓にあたるこのポジションの選手が次々といなくなっていることには不安がつきまとう。
とりわけ昨シーズンCLで決勝に進出したチームで、MVP級の活躍を果たしていたギュンドガンの場合は、開幕直後にドイツ代表のパラグアイ戦で負傷すると、ツォルクSDも「(復帰までの)詳細なめどが立たない」とお手上げ状態。10月14日にようやく軽いランニングを始めたばかりだ。
負傷者が次々と生まれた原因はいくつか考えられる。
・主力選手の多くが代表チームでも主力級のポジションを手にするようになり、試合数が増加したこと。
・昨シーズン、あまりローテーションの採用に積極的でないままCL決勝まで勝ち進んだために生じた、主力選手たちの疲労。
・クロップ監督の求める運動量とハードな守備の代償。
どれかひとつが大きな原因というよりも、これらが複雑に絡みあって悲惨な状況が生まれたのだろう。
果たして、この苦境をいかにして脱していくのだろうか。
勝利こそが、自分たちのサッカーの証明になる。
奇しくも今シーズンの開幕前に、クロップ監督はこんなことを話していた。
「ときにはベンチに座る必要があるということを選手たちは学ばないといけない」
クロップは今シーズン、ローテーション制を本格的に採用しようと考えていたのだ。実際、結果こそ出なかったが9月21日のリーグ第6節、格下のニュルンベルク戦ではスタメン4人を入れ替えて臨んでいた。
もともと試合数の多かったイングランドなどとは異なり、これまでドイツでローテーション制が採用されることはあまりなかった。例えば、'09-'10シーズンのバイエルンのラームは非常に長い時間プレーしている。リーグ戦とドイツカップの国内2冠に加え、CLで決勝進出を果たしたファンハール率いるバイエルンが戦ったシーズン公式戦は53試合。ラームはそのすべての試合でプレーし、うち52試合はフルタイム出場を果たしている。
ブンデスリーガの歴史の中で本格的にローテーションを採用して結果を残したのは昨シーズン3冠を達成した、ハインケス監督に率いられたバイエルンが初めてだった。クロップ率いるドルトムントもバイエルンに続こうとしているのだ。
現時点で怪我人が続出しているのは、ローテーション制を進める過渡期であるためなのかもしれないし、クロップの求めるサッカーの限界を表すものなのかもしれない。
チームが力をつければ試合数は増えていく。そのためにはローテーション制の導入は必然だろう。現在の苦境はあくまでそれが原因であり、自分たちのサッカーに限界などない。そのことを証明するためにクロップ監督とドルトムントは今シーズンを戦っていくことになる。