ブックソムリエ ~新刊ワンショット時評~BACK NUMBER
ヴェンゲルの心は折れていないか?
~『ヴェンゲル・コード』を読む~
text by
幅允孝Yoshitaka Haba
photograph byRyo Suzuki
posted2013/10/14 08:00
『ヴェンゲル・コード アーセナル、その理想の行方』 リチャード・エヴァンズ著 東本貢司訳 カンゼン 1980円+税
金に支配される人生なんてまっぴらだと誰もが思っている。だが、現代に暮らす誰もがそのシステムから抜け出せないように、アーセン・ヴェンゲルも自身の哲学とお金の間で揺れ動き、身悶える、一人の男なのだ。
当時の英国フットボール界に欠けていた戦術やトレーニング法、選手管理のマネジメントを徹底し、素晴らしい最初の9年間を過ごしたアーセナルのヴェンゲル監督。そのメソッドは、彼の「コード(法典)」と呼ばれた。
だが、ボスマン判決以降、サッカー選手は最も待遇のよいチームを渡り歩く流浪の職業となる。オイルマネーが流入し、フットボールの大部分はマネーゲームの様相を呈するように……。結果、彼にとって次の8年間はトロフィーとは無縁の暗黒時代が訪れた。