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日本GPで最速レッドブル勢に肉薄!
グロージャンと小松礼雄の“雪辱”。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2013/10/14 12:00
表彰台の下でチームスタッフたちとグロージャンを見上げる小松。「2年目になって精神的に余裕ができたから」と、グロージャンの躍進を説明してくれた。
2度目の鈴鹿で、絶対に失敗はできない……。
これまでずっとグロージャンをかばってきた小松だが、今年の日本GPに臨むにあたっては複雑な胸中だったに違いない。それは鈴鹿を自身の母国グランプリとしていながら、担当していたグロージャンが昨年派手な事故を犯していたからである。
グロージャンと小松にとって、2度目の日本GP。
昨年と同じ4番手から絶好のスタートを決めて目の前のセバスチャン・ベッテルをイン側からかわすと、目の前にはポールポジションからスタートしていたウェバーがいた。その瞬間、グロージャンは昨年の事故のことを思い出したという。
しかし、今年のグロージャンは完璧だった。
だれにもぶつけず、そしてぶつけられることもなく、1コーナーをトップで通過。その後もミスのない走りで、トップを堅守する。その走りをモニターで見ていた小松は、優勝するための戦略をエンジニアたちと練る。そして、出された答えはオーソドックスな2ストップだった。
「ペースはいい。設定通りのタイムで走行している」(小松)
グロージャンを信じた作戦だった。
レッドブルをぎりぎりまで追い詰めたのだが……。
逆にレッドブルは、ミスのない走りを続けるグロージャンに対抗するため、戦略を変更してきた。2番手のウェバーは2回ストップから3回ストップに変更。3番手を追走していたベッテルは反対に、2度目のピットストップまでの第2スティントをだれよりも長くとる変則2ストップに打って出た。
果たしてベッテルの戦略も、ウェバーの作戦変更も功を奏して、レース終盤、グロージャンは2台に相次いでオーバーテイクを許して、3位でチェッカーフラッグを受けた。
グロージャンにとっては、今年4度目、通算6度目の3位だった。それでもグロージャンを祝福しようとロータスのスタッフは表彰台の下へ急いだ。もちろん、その中には小松の姿もあった。
表彰式でグロージャンが3位のトロフィーを獲得すると、小松は両手を高々と上げて、グロージャンを拍手で祝福していた。