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5人の王者が語る「神が宿る」コース。
25度目の鈴鹿、日本GPが遂に開幕!
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2013/10/10 11:50
韓国GP優勝で年間タイトルに王手をかけたベッテル(写真右)。元年間王者が5人(アロンソ、ライコネン、ハミルトン、バトン、ベッテル)も揃った過酷な今シーズンを制し、4連覇なるか?
「どこでレースをするかは、私にとってそれほど重要なことではない。できるだけ良い結果を目指し、それが達成されればハッピーだし、そうでなければ楽しめないというだけさ。でも、鈴鹿だけは違う。結果がどうなろうと、毎年楽しみにしているサーキット。それが鈴鹿だ。その理由は速くてテクニカルなパートがいくつもあるからだ。特に前半区間のアクセルワークは慎重に行わないと、すぐにコースアウトして痛い目に遭う。完璧なラップを刻むのがとても難しく、ドライバーにとってチャレンジしがいのあるサーキット。グランプリコースというのは、こうあるべきだと思っている」
これは2007年の年間王者、キミ・ライコネンの鈴鹿評である。
饒舌ではないが、常に的を射た発言をするライコネンのこのコメントには、鈴鹿の魅力が凝縮されているように思う。
今季のF1世界選手権は、前戦韓国GPでセバスチャン・ベッテルが今季8勝目を挙げ、ドライバーズ選手権で77点のリードを保って鈴鹿に乗り込む。10月13日のレースで、もしもベッテルが優勝して、ドライバーズ選手権2位のフェルナンド・アロンソが9位以下に終わると、4戦を残して今シーズンのチャンピオンがベッテルに決定する。
韓国GPで2位に入り、再びランキングを3位に上げたライコネンだが、すでにタイトル奪還という望みは断たれてしまっている。それでも、特別な場所でレースをすることをライコネンはいつも楽しみにしているという。
8年前の日本GPはライコネンの伝説のレースとなった。
その言葉に偽りがないことは、8年前の日本GPが物語っている。
その年、ライコネンはフェルナンド・アロンソとタイトル争いを演じていたが、直前のブラジルGPでアロンソが年間タイトルを決めていた。さらに予選でのアタック時に雨にたたられるという不運を被って、17番手からのスタートを余儀なくされた。それでも、ライコネンはレースを捨てなかった。なぜなら、そこが鈴鹿だったからである。
1台1台オーバーテイクしていったライコネンは、ついにファイナルラップでトップのフィジケラを大逆転。「いまでも僕のベストレースのひとつだ」(ライコネン)という快走を演じた。