MLB東奔西走BACK NUMBER
賭けに勝った松坂、来季もメジャーへ。
野茂、グッデンという「16番」の系譜。
text by
菊地慶剛Yoshitaka Kikuchi
photograph byGetty Images
posted2013/10/13 08:01
かつて野茂英雄やドワイト・グッデンの背負ったメッツの背番号16。果たして来シーズン、この16番が輝くシーンは見られるだろうか。
変化球頼りの投球は、少しのミスが命取り。
メッツの試合を担当するTV局が試合中に紹介したデータによると、松坂の真っ直ぐの割合は対戦する打線の1巡目では62%なのに対し、2巡目44%、3巡目36%と、徐々に変化球に頼った投球になっているそうだ。
それだけに制球力、投球の組み立てがちょっとでも狂ってしまうと、力で抑え切れない分、厳しい投球になってしまう。それはメッツ移籍後、最初の3試合の登板を見ればわかるだろう。
さらにインディアンスでは左脇腹を負傷するなど、シーズンを通してローテーションを守ることができなかった。2009年以降、毎年のように負傷を繰り返している状況で、右ヒジ以外でも健康上の不安を払拭できていない。
とはいえメディアの予想ほど当てにならないのも事実だ。かつてメッツで16番をつけていた男が、それを痛感させてくれた。
その男とは、野茂英雄投手だ。
野茂、グッデンという偉大な先人に並ぶために。
1998年、野茂は前年に右ヒジ手術をし、メッツにトレードされていた。しかし、メッツでも満足な成績を残せず、翌年のキャンプ中にオープン戦の投球内容の悪さから解雇処分になっていた。当時のメディアは誰一人として野茂の解雇を疑問視したり、否定するものはなかった。
しかし、野茂はその後、カブスとの契約、解雇を経てブルワーズと契約。その年12勝を挙げ見事な復活を遂げる。2001年には自身2度目となるノーヒットノーランを達成するなど、その後の活躍は周知の通りだ。
野茂ばかりではない。メッツの16番を最も有名にしたドワイト・グッデン投手にしてもそうだ。
1994年シーズンにコカインの陽性反応が出て、60日間の出場停止処分となり、さらにその期間中にも再び陽性反応が出て、1995年のシーズン全試合の出場停止処分が加えられた。
復帰を目指したグッデンだったが、“ドクターK”と畏怖された投球とはかけ離れた内容で、やはり当時のメディアは彼の復帰を懐疑的に見ていた。しかし、1996年にヤンキースと契約したグッデンは、その年にノーヒットノーランを達成するなどして2000年まで現役を続けている。
今後も松坂がメジャーのマウンドに立つ限り、過去の16番たちがそうしてきたように、自らの投球でどんな困難も打開していく道は残されている。
来シーズンは松坂の復活劇で盛り上がっているのかもしれない……。