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<外国人監督が語る> ニッポン野球の正体。 ~バレンタイン・ヒルマン・ブラウン・コリンズの証言~ 

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ロバート・ホワイティング

ロバート・ホワイティングRobert Whiting

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photograph byKoji Asakura

posted2010/12/16 06:01

<外国人監督が語る> ニッポン野球の正体。 ~バレンタイン・ヒルマン・ブラウン・コリンズの証言~<Number Web> photograph by Koji Asakura

2005年、外国人監督として初めて日本シリーズを制覇。現在は、テレビ局ESPNの野球解説者

「バントは日本人の“免罪符”だ」(ヒルマン)

 日本で最も成功したアメリカ人監督と言えるヒルマンも、似たようなフラストレーションを体験した。コリンズとは異なり、選手たちにキャンプの練習量を1日3時間に制限する等、アメリカ式練習法を採り入れることに成功したが、結果はおもわしくなかった。

トレイ・ヒルマン '03-'07 Fighters
来日直前『武士道』や『ドカベン』を読み、日本人の気質を積極的に学ぼうとしていたという

「私のやり方が受け入れられていないのは明らかだった。だから選手やコーチたちに意見を聞いてみた。すると開口一番、『キャンプ中、もっと長く練習させてほしい。半日の練習では物足りない』ときた。実際、金子誠が私のところに来て、こう言った。『あなたのやり方では闘争心が湧いてきません』とね。だから私は信念を曲げて、夕方5時まで練習させた。彼らは特に守備練習をやりたがったよ」

 日本人はバント練習も要求したという。バントはいかにも日本的な作戦で、大量得点を狙う攻撃的なヒルマン方式とは正反対だ。大半のアメリカ人監督と同様、ヒルマンもバントはアウトカウントの無駄遣いだと考えた。

「バントは日本人の“免罪符”だ。大量得点のチャンスをむざむざ見過ごし、失敗を回避するための弁解でしかない。選手たちはある種の安心感を得られる。『よし、危険を冒すより、堅実に1点取っておこうぜ』とね」

『得点予想研究』によれば「バントはきわめて効率が悪い」。

 ヒルマンはアメリカ野球学会(SABR)のウェブサイト〈Baseball Prospectus〉による『得点予想研究』を引用した。それによると、バントはきわめて効率が悪い。ノーアウト・ランナー一塁の場合、得点する確率は0.891。ワンアウト・ランナー二塁(先頭打者がシングルヒットを放ち、犠牲バントで進塁するケースが多い)の場合、得点確率は0.682に落ちる。つまりノーアウト・ランナー一塁で犠牲バントをした場合の数値のほうがずっと悪いのだ。

 しかしヒルマンはまた我慢した。

「チームに精神的満足感を与えようと思ったんだ。選手たちは練習なしではいられなかった。ダルビッシュを筆頭に、投手陣はかなり充実していた。外野手は揃いも揃ってゴールデン・グラブ賞レベルだ。立派なスタジアムでプレーしていたし、みんな一生懸命仕事をしてくれた。それがなによりの支えだったよ」

 ファイターズはその後、'06年に日本一に輝いた。外野手は揃ってゴールデン・グラブ賞を獲得。犠牲バントの数は前年よりも倍増した。『クローズアップ現代』の国谷裕子キャスターは、ヒルマン監督は“ベースボール”を“野球”に変えた、と絶賛したものだ。

【次ページ】 ヒルマンが講演の聴衆からされた忠告の中身。

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