久しぶりの実戦は“スムーズ”だった。

　その後、逆に吉田は代表で頭角を現していき、森重は今夏まで長らく日の丸を背負う機会がない時期が続いた。もちろん、そうしたお互いの立場の変遷によって、二人の関係にヒビが入ってしまったわけではない。

　以前、代表の話をしていたとき、吉田がポツリとこう漏らしていたことを覚えている。

「最近は代表のメンバーが固定され過ぎているみたいなことをよく言われますよね。選手の立場からすればそれは何とも言えないですけど、でも当然Jリーグにもいい選手がたくさんいるわけで。

　思い浮かぶのは、モリゲ（森重の愛称）。同じCBとして良い選手だと思います。これは上から目線とかではなくて（笑）。モリゲはリーグ戦でも安定したパフォーマンスを見せていると思うし、守備だけではなくてキックも上手い。代表のレベルですよ、間違いなく」

　そんな森重と、今回吉田は久しぶりに実戦でコンビを組むことになった。

　はたしてどんなプレーを見せるのか。吉田の森重に対する思いや考えは先の言葉でわかっていたので、実はそれほど不安視はしていなかった。そして案の定、両者は安定した姿を披露。チャレンジ＆カバーもそつなくこなし、またお互いに足元の技術も武器であるため、攻撃のビルドアップでも非常にスムーズなボール交換を行っていた。グアテマラとの力量差はあったにせよ、2人の関係性の第一印象は“スムーズ”だった。

「テンポや波長が合って、同じ考え方をしている」

　吉田は、森重とのプレーをこう振り返る。

「モリゲとは北京五輪以来でしたね。試合前からとにかくたくさん話して、コミュニケーションを取っていこうと言っていた。実際に試合をやってみてですか？　すごくやりやすかった。もちろん今ちゃん（今野）とは長い関係なので単純な比較はできないですけど、本当に問題なくプレーできました。

　特に、ボール回しのテンポや波長がお互いに合っていたと思う。多分、そのあたりはプレースタイルも含めて、同じ考え方をしているところがある。モリゲの方がより人に強いという印象はあるかもしれないけど。名古屋時代にモリゲがいた大分と対戦した時、ミスター（ドラガン・ストイコビッチ監督）が『なんだ、あのクラッシャーは！』と名指しで怒っていたぐらいですからね（笑）。今回見ていても、ヘディングの競り合いでも飛ぶタイミングが良いなと思いました」

　ここまでの話を聞く限り、吉田はもしや今野よりも森重とのコンビを望んでいるのかと、うがった見方もしたくなるかもしれない。

　ただ、ここからが吉田が再確認した心情と、覚悟だった。

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