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男・村田修一、夏場の大変身。
もう“乙女”とは言わせない――。 

text by

村瀬秀信

村瀬秀信Hidenobu Murase

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photograph byKyodo News

posted2013/09/11 10:30

男・村田修一、夏場の大変身。もう“乙女”とは言わせない――。<Number Web> photograph by Kyodo News

9月7日には阪神、藤浪の高校時代から続く甲子園不敗記録を「17」で止める決勝2ランを放った“男”。勢いは当分止まりそうにない。

日本一を経験するも、プレーヤーとしては蚊帳の外。

 優勝を渇望し、巨人に移籍した昨年。序盤こそ好調を維持し、5月1日には初の4番に指名されるも、得意とする夏場に失速し4番から降格。得点圏打率.230という数字以上に、「チャンスに打てない」という印象を残した。9月7日のヤクルト戦では2回で途中交代、原監督から「今日はもう帰っていい」と強制帰宅命令が出るほどの惨状となり、丸刈りにして男を見せたが、打撃不振からは抜け出せず、最後には「守備の人」という風潮までが出てくる始末。

「ホームランにはこだわります」とは口では言うものの、周囲に強打者がいるため、自分ひとりで決めなくてもいいチーム事情からなのか、村田のバッティングは時に進塁打のような、つなぎを意識したものになっていた。その後、念願だったCS、日本シリーズを経験し、巨人に来てはじめての日本一を体験したが、プレーヤーとしてはほぼ蚊帳の外。あの豪快だった“男・村田”の姿は最後まで見られなかった。

「オレ、来年も契約してもらえるかな」

 今シーズン、開幕当初は5番で起用されたが早くも4月16日には7番降格。5月26日のオリックス戦では1回表にエラーを犯し、その直後の打席で三球三振を喫すると、原監督に「準備が出来ていない」と断じられ、去年と同じような懲罰交代を命じられた。

 5月は.267、3本塁打。6月は.247、1本塁打、得点圏打率.188と「チャンスに弱い」というレッテルを覆せずにいた中で迎えた、6月12日のオリックスとの交流戦。原監督は、横浜・牛島監督が村田に「命を懸けて打ちました」と言わしめた事件を知ってか知らずか、「9番サード」で先発起用。しかしその荒療治にもその日は結果を残せなかった。

 その後、食事中に坂本に「オレ、来年も契約してもらえるかな」と弱気な発言をしていたという新聞報道が出た時は、もう、“男・村田”は完全にこの世から消滅してしまった……という物悲しさを感じずにはいられなかった。そんな村田を巨人ファンの友人の多くが、やはり「乙女・村田」と呼んでいたことには、なんとも言えない複雑な気持ちになった。

 違う。かつて村田は“男・村田”だったのだ。今年は2年契約最終年。新天地でも乙女と呼ばれ、帰るべき場所もなく、このまま村田は終わってしまうのか。

 そう思われたこの夏、村田修一は劇的な変化を遂げた。

【次ページ】 打者の命、フォームを変える決死の賭けに出る。

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村田修一
読売ジャイアンツ

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