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「自分のプレー」から「背負う者」へ。
勝負の今季を前に変わった清武弘嗣。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2013/08/22 10:30
志願して直接FKを蹴り、見事同点ゴールを決めた清武。ブンデス2年目、もはや遠慮をする時期は終わったのだ。
チームの成績に責任を感じるようになった今シーズン。
昨シーズンはチームの中心であることは否定しなかったものの、あくまでも自分のプレーをするだけと口にすることが少なくなかった。ところが、今シーズンは少し違う。チームの成績を引き上げるために戦うことを隠さない。結局は、それが自分のためになるということをわかっているからだろう。
「もう2年目なんで、環境に慣れてないとか言い訳はできへんシーズンやし。チームメイトがこれだからダメだっていう風にも言えないんで。結果がもし出なかったら自分の実力不足だと思います」
そして、昨シーズンは4ゴール、10アシストという成績を残しているが、目標には到達しなかったため、再びそこに挑もうとしている。
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「目標は昨シーズンと一緒っすよ。俺が(ゴールとアシストを)二桁目指したいなと思いますし、だからゴールに近いところでプレーしたいと思います」
開幕直後も、清武の置かれた状況は微妙なところだった。
開幕翌週のミッドウィークに行なわれた日本代表のウルグアイ戦には、長谷部誠、酒井高徳、内田篤人、岡崎慎司と並んで、清武が選ばれる一方で、それまでは代表に名を連ねていた細貝、乾貴士、酒井宏樹は選ばれなかった。
クラブではレギュラー、代表ではそうではない。
選ばれなかった3選手は所属クラブで、現時点ではレギュラー争いの当落線上にいる選手たち。だからこそ、無理して招集しないことでクラブでの競争に専念できるよう配慮があったことは明らかだろう。実際、その甲斐もあり、代表戦直後のリーグ戦ではそろって先発の座をつかんでいた。
一方で、清武を含め、招集された5選手は所属クラブでのレギュラーを問題なくとれるとみなされている選手たちだ。ただ、清武だけはその中で代表戦で1秒たりとも出番を与えられなかった。
「試合に出れないことは選手として悔しいですけど、代表ではすごく吸収できるものがたくさんあります。ウルグアイとの試合の代表をしっかり見てましたし、まあピッチには立てませんでしたけど、すごくいい勉強ができたと思います」
と、殊勝なコメントを残した清武だが、この状況で満足していいわけがないだろう。
所属するニュルンベルクでは不動のレギュラーだが、代表ではそうではない。そんな微妙な立場に置かれている。だからこそ、清武がやるべきことはただ一つ。所属クラブで最高のパフォーマンスを出し続け、それを代表につなげることだけなのだ。
結果を残しても、すぐに自らを戒める言葉をつけくわえるのは、彼の目標が簡単ではないところにあるからではないだろうか。