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<セ・パの最多安打男が語る> 西岡剛×マートン 「200本超えで見えた新世界」 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byYasuyuki Kurose

posted2010/11/17 06:00

<セ・パの最多安打男が語る> 西岡剛×マートン 「200本超えで見えた新世界」<Number Web> photograph by Yasuyuki Kurose

二人に共通する「詰まることを恐れない」という価値観。

 もちろん、心の持ちようだけではない。

 西岡とマートンが葛藤を乗り越えることができた裏には、技術的な裏付けがあった。イチローが生み出した“200”という価値観に挑み、クリアした二人には、イチローのバッティングとの共通点があったのだ。イチローが初めて世に発した『詰まることを恐れない』という価値観――西岡はこう言った。

「初球からどんどん振っていくというスタイルを崩さずに、ボール球をしっかり見極めようと考えました。そのために今年は、打つポイントを身体に近づけようと意識したんです。今までは、当たれば飛ぶという理由で身体の重心をボールにぶつけにいって、前で捌いていました。でも、それでは変化球に泳がされるし、ボール球にも手が出て、空振りも多くなる。だから、ポイントを近くしたんです。その分、差し込まれて詰まる恐れもありますけど、振り切ればいい。しっかり振り抜いて200本を打つんや、というところは絶対に譲らんとこうと思ってました」

 一方のマートンも、こんな話をしていた。

「詰まることを恐れないという意識は重要だよ。優れたバッターは、詰まることを怖がらない。意識すべきは両手の軌道であって、打球の強さよりも手の動きが正しかったかどうかが重要になるんだ。常に正しいスイングをして、適切な角度でボールを捉えられるかどうかを強く意識する。結果として、詰まって内野の頭を越えるポテンヒットになったとすれば、それがまともなスイングだったという証になる。スイングが悪ければ、内野ゴロに仕留められてしまうのがオチだからね」

西岡とマートンが立った野球人生、二度目のスタートライン。

 知らず知らずのうち、イチローの価値観を道標にバッティングと向き合い、200という大台を初めて超えた二人。溢れんばかりの才能を持て余し、チャンスを生かし切れなかったもどかしさを、西岡とマートンは今年、ついに振り払うことができたのだ。

「今年は僕の野球人生で、初めて自分の実力を存分に、フルに出せた年だと思います。でも、もっと早いうちに気づいて、もっと野球にのめり込んで、もっと野球をナメずにやっていれば、もっと、もっと……」(西岡)

「自分には能力があると思っていたし、自信もあった。でも、努力なくして成功はあり得ない。日本に来たときも、全力で取り組む覚悟ができていた。アメリカでの境遇を悔やんだりするヒマはなかったんだ」(マートン)

“200”という未知の世界に足を踏み入れた西岡とマートンは今、野球人生、二度目のスタートラインに立つことができた。孤独と向き合わなければならない、超一流の世界へのスタートラインに――。

西岡剛(にしおか つよし)

1984年7月27日、大阪府生まれ。大阪桐蔭高から'03年ドラフト1位でロッテ入団。1年目から一軍入りし、'04年にスイッチヒッター転向で頭角を現す。今季はキャプテンを任されフルイニングに出場。200本安打はスイッチヒッターとしては初めての快挙。182cm、80kg

マット・マートン

1981年10月3日、アメリカ・フロリダ州生まれ。'03年ドラフト1巡目でレッドソックス入団。'04年に移籍したカブスで'05年7月にメジャー昇格。'06年も好成績を収めるが、'07年以降はトレード要員に。アスレチックス、ロッキーズを経て今季阪神に入団した。185cm、99kg

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