リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
世界一有名なサッカーの応援団長!?
スペインの“マノロおじさん”の素顔。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2010/11/08 10:30
バルのオーナーでもあるマノロおじさん。自分の店は「メシを食うための金を稼げればそれでいい」とのこと
ナダルよりも注目されたスペイン代表応援団の名物男!
後ろに座っていたスペインサッカー連盟のスタッフに事情を聞くと、「今朝、戻ってきたみたい」。そしてこうも付け加えた。「あのボンボ・マノロがスペイン代表の歴史的な試合を見逃すと思う?」。その通りだと思った。
オランダとの決勝の前、マノロと再会した。
不思議なことに咳はピタリと止まっていた。相変わらず太鼓のケースには様々な食べ物が入っていて、「試合が終わったら一緒に食べような」と、またしても勧められた。
試合後、スタジアムの出口にちょっとした人だかりを見つけた。
赤いジャケットを着たマノロが観客に囲まれていたのだ。その中に、やけに鍛え抜かれた体格をした若者がいると思ったら、それは私服姿のラファエル・ナダルだった。野次馬たちの目当ては総じてマノロだったとはいえ、世界最高のテニスプレーヤーに誰も見向きもしないというのは、かなり奇妙な光景だった。
30年以上もスペイン代表を応援し続け、さらにはユーロとW杯の優勝を見届けたマノロはこう語る。
「もうこれで思い残すことはない。くしゃみでもしてお腹の傷が開いて死んでしまってもいいさ」
もちろん本音ではない。まだ死ぬわけにはいかないのは、養子として迎えた9歳の愛娘マヌエラちゃんをしっかりと育て上げるためである。
2012年のユーロには行くつもりでいるが、もし体調が悪ければ、今回のW杯のような無理はもうしないそうだ。「何よりも大切なのは、家族だから」と彼は言う。
マノロ家の幸福と、愛すべきエル・ボンボの健康を願うばかりである。
<マノロおじさんの公式サイト>
「MANOLO“EL DEL BOMBO”」