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豪州戦勝利の陰の功労者・豊田陽平。
28歳の遅咲きFWは日本の救世主か?
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTakuya Sugiyama
posted2013/07/26 12:05
オーストラリア戦後、豊田は「ネガティブにならずに次は点を取りたい」と韓国戦に気持ちを切り替えていた。
モヤのかかった華城(ファソン)スポーツコンプレックスに、嫌な雰囲気が漂った。
2点リードしながらも勝ちきれなかった東アジアカップ初戦の中国戦と同じように、動きが落ちて疲労の色が濃くなった後半の時間帯にゴールを立て続けに奪われた。それまでまったく歯ごたえのなかったオーストラリアに攻めこまれての2失点。逆に勢いを与えてしまっていた。
しかしこの日は違った。
同点に追いつかれたその1分後だった。途中出場の工藤壮人がゴール前まで迫り、パスを受けた豊田陽平が走り込んできた大迫勇也に合わせるようにマイナスにパスを出す。その大迫がゴール左隅に落ち着いて蹴り込み、試合を決める3点目は生まれた。
持ち前のシュートセンスを発揮して2ゴールを奪った大迫勇也が、勝利の「表の功労者」であることは間違いない。そしてまた、彼の2ゴールをアシストした豊田陽平こそが「陰の功労者」であったように思う。
試合後の会見でアルベルト・ザッケローニ監督は自ら豊田の名前を出してこう言った。
「豊田が得点できなかったのは、個人的に残念だ。あれだけやってくれたのだから、1点ぐらいあげても良かったのに、とは思っている。前線でのキープ、ポストプレー、ヘディングでの落とし、ゴールに向かっていくプレーなど本当に良くやってくれた」
指揮官も、黒子になって働いた185cmの長身ストライカーの働きを高く評価していた。
11人全員、先発を入れ替えるというサプライズ。
オーストラリア戦はサプライズがあった。
それは中国戦から11人全員、先発を総入れ替えしたこと。「全員は使えないかもしれない」とザッケローニはこれまで語ってきたが、「昨日の練習を見て中国戦のメンバーのコンディションがあまり良くなかったので、こういった決断をした」と理由を説明した。ただ、「今大会の一番の目的はできるだけ多くの選手を試すこと」であり、試合前日には「彼のプレーを見てみたい」と中国戦で出番のなかった豊田の起用を示唆していた。
だが、この日の先発メンバーは中国戦先発組の“相手側”としてフォーメーションを組んではいたが、このオーストラリア戦に向けた戦術練習では同じメンバーで組んでいなかった。そして試合当日の夕方にザッケローニの口から先発が発表されると、豊田は4-4-2の2トップでコンビを組む大迫とコミュニケーションを取った。豊田が明かす。
「スタメンだとわかって、サコ(大迫)とは2人で話し合いました。お互いにいい距離感を保ちながら、声を掛けて、いいポジションを取りながらやっていこう、と」
A代表初選出同士とは思えないほどの好連係ぶりだった。