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豪州戦勝利の陰の功労者・豊田陽平。
28歳の遅咲きFWは日本の救世主か? 

text by

二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2013/07/26 12:05

豪州戦勝利の陰の功労者・豊田陽平。28歳の遅咲きFWは日本の救世主か?<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

オーストラリア戦後、豊田は「ネガティブにならずに次は点を取りたい」と韓国戦に気持ちを切り替えていた。

激化するザックジャパンの1トップ争い。

 28歳でのA代表デビューは、遅いと言えるだろう。

 本田圭佑や長友佑都ら今やA代表の中心となっているメンバーとほぼ同世代で、北京五輪にも出場した。将来を有望視されながらも伸び悩んだ感があったが、サガン鳥栖に移籍してからはグングンとその才能を伸ばしてきた。

 そしてようやく掴んだA代表招集のチャンス。様々な経験を経てきた上でのデビュー戦だったが、気負いもなく自然体で試合に臨んだ印象がある。その一方で「インパクトを残す」という不退転の決意も感じ取ることができた。ゴールはなくとも、それはザッケローニ監督に伝わったのではあるまいか。

「リラックスしていつもどおりというところを心掛けました。でも、これがラストチャンスというか、しっかり(この試合で)勝負しなきゃいけないというのも感じつつ、臨めたので、それがいい方向に進んでいたとは思います。今まで準備してきたことを無駄にしたくはなかった。あと足りなかったのはゴール」

 トップの争いは苛烈になってきた。

 先の中国戦では1トップに入った柿谷曜一朗が1ゴール、1アシストの活躍を見せている。トラップの巧さ、意外性のある攻撃のアイデアなど豊田とは違う持ち味を十分に発揮して結果を残した。またこの日、2ゴールをマークした大迫もボールの収まりが良くて、視野も広く、いいアピールになったはず。

 ザックジャパンの1トップには前田遼一、ハーフナー・マイクが常連メンバーとしているものの、どちらも絶対的な存在とはまだ成り得ていない。“東アジア組”のなかでレベルの高い争いを繰り広げていけば、ここからザックジャパンの従来のメンバーに食い込んでくる可能性は十分にある。

ここはゴールではなく、スタートなんだ。

 メンバーを入れ替えてこのオーストラリア戦に臨んだことが、結果的には吉と出た。トップのポジションばかりでなく、全体的にチャンスが与えられたことでチーム全体がさらなる活気を帯びてきたように感じる。

 28日の最終戦は、ライバル韓国との一戦になる。洪明甫(ホン・ミョンボ)を監督に迎え、彼もまた若い選手たちをテストしている。中3日の韓国に対して日本は中2日とコンディション的なハンディキャップこそあるが、内容とともに結果を掴んでこそ、メンバーには次なる道がある。

 豊田は試合前、君が代を聞きながら、こう思ったのだという。

「心に染み入る部分はありましたけど、ここがゴールではなく、スタートなんだとすぐに気持ちを切り替えた」と――。

 そう、今はまだスタートを切ったに過ぎない。

 ライバル相手に内容、結果で勝ち切ってこその成果。豊田にとっても、他のメンバーにとっても、アウェーで臨む韓国戦が極めて重要な意味を持つことは言うまでもあるまい。

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