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<運命のドラフトを巡る証言>松井秀喜
――長嶋監督の電話にも怪物は笑わなかった。 

text by

小川勝

小川勝Masaru Ogawa

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/10/22 06:00

<運命のドラフトを巡る証言>松井秀喜――長嶋監督の電話にも怪物は笑わなかった。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

くす玉の垂れ幕に、なぜか「阪神松井誕生」の文字が。入団後は、ミスターと固い師弟関係を築いた

長嶋監督からの電話にも顔色一つ変えなかった松井。

 会見も終わりに近づいたころ、室内の片隅に置かれた内線電話が鳴った。電話に出た係員が、松井を呼んだ。これが会見終了の合図のような形になった。松井は部屋の隅に行って電話に出た。そして1、2分、話して電話を切ると、まだ残っていた報道陣のところへ戻ってきた。誰からの電話だったのか。そう聞かれると、松井は宙に視線をやったまま、ごく簡潔に答えた。「長嶋監督です」

 残っていた報道陣は再び色めき立って、会話の内容を質問した。「交渉権を獲得したのでよろしくということでした。監督の印象? テレビの印象そのままの人でした」と語る松井に、長嶋監督から直接電話をもらった興奮といったものはまるでなかった。

 巨人1位指名にも、長嶋監督の電話にも顔色一つ変えなかった松井。それは阪神ファンであったという理由を超えて、その後「巨人の4番」にも安住しなかった、彼の器の大きさを、18歳にして、示していたように思える。

松井秀喜(まつい ひでき)

1974年6月12日、石川県生まれ。'93年、星稜高校から巨人に入団。'98年、'00年、'02年に本塁打王と打点王の2冠、'01年に首位打者獲得。'03年、ヤンキースにFA移籍。昨年、ワールドシリーズMVP獲得。今季はエンゼルスに所属

Number764号「プロ野球ドラフト秘話。」では、「運命の日を巡る6人の証言 その時、球史が動いた」として、松井秀喜選手の他、イチロー、小池秀郎、福留孝介、松坂大輔、田中将大の各氏・選手の話題を呼んだドラフトを6人の当事者が証言しています。

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