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クローザーとして蘇った上原浩治。
MLBきっての“モテ男”の来季を占う。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2010/10/06 10:30
「巨人軍は紳士たれ」以上に厳格な規律があるオリオールズ。なんと長髪や髭まで禁止されているほどだ。そこで、上原はもみ上げを……
保有権を維持したオリオールズは来季も上原を守護神に?
これで楽しみになってきたのが、来季の上原の去就である。
オールスター明けから好調を維持していた上原には、8月の時点で数球団からオリオールズに対してトレードの申し込みがあったと噂される。トレード期限は過ぎていたものの、選手の保有権を放棄する「ウェーバー」によって8月末までに移籍手続きが完了すれば、プレーオフでの登板が可能になるからだ。
しかしオリオールズは上原をキープすることを決断した。おそらく、来季もクローザーとして上原と契約する意向が球団にあるからではないか――と推測される。
ただし、上原の年俸5ミリオン(約4億1千5百万円)は先発投手としてのもので、クローザーとしては割高感がある(オリオールズにとってという意味)。ヤンキースのリベラでさえも、チーム内ではサバシア、バーネットよりも低い年俸に甘んじていて、メジャーでは待遇面で先発の地位がまだ高く、ブルペンの投手たちは稼働日数が多いにもかかわらず我慢を強いられている。
オリオールズとしては、年俸を値切ったうえで上原と再契約を交わすというシナリオを持っているのではないか(おそらく2億円前後のレンジ)。
クローザーかセットアッパーか? 注目される上原の移籍先。
そうなるとモテモテの上原としては、他の球団の動向を探りたくなるのが本音だろう。しかもヤンキース、レイズ、レッドソックスと強豪がひしめく地区ではプレーオフに出る望みは薄い。年齢のことを考えると、ポストシーズンを狙えるチームへの移籍を真剣に望んでも不思議はない。しかし移籍するとなると、クローザーではなくセットアッパーになる可能性も出てくる。オフの交渉ではクローザーとして売り込むかどうか、エージェントのマーク・ピーパーとしては腕の見せどころになる。
結果的にオリオールズと契約することになっても驚かないが、「売り手」の上原としては職場を選ぶ大きなチャンスであることは間違いない。
いま、上原はもみあげを長く伸ばしているが、そうした外見に気を配れるのは、実績を残したからに他ならない。
上原のもみあげは自信の証。
さて、来年は何色のキャップからそのもみあげが出ていることやら……。