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「世界屈指」から「最低」へ。
F・トーレスに何があったのか? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2010/10/01 10:30

「世界屈指」から「最低」へ。F・トーレスに何があったのか?<Number Web> photograph by AFLO

2-3で敗れたマンチェスターU戦でのF・トーレス。敵将・ファーガソンに「我々の選手を退場に追い込むためオーバーに倒れた」などとも批判され、散々だった

大きく空いた中盤守備の“穴”が攻撃の集中力を削ぐ。

 マンチェスターU戦(2-3)では、ハットトリックを達成した敵のFW、ディミタル・ベルバトフとの貢献度の差が取り沙汰された。だがこの試合では、チームの状態も考慮しなければならない。マンU戦でのトーレスは前線で孤立していた。

 リバプールは、相手が積極的に攻めてくるアウェーゲームで、中盤の底からハビエル・マスチェラーノが消えた守備の“穴”を露呈している。マンチェスターCには3点を奪われて完敗し、バーミンガム戦ではペペ・レイナのセーブ連発で辛うじて敗戦を免れた。結果として、オールド・トラッフォードで中盤の選手が守りを意識しても仕方はない。2列目から攻撃をサポートするはずのスティーブン・ジェラード、ジョー・コール、マキシ・ロドリゲスは、揃って下がり気味だった。その代償として、トーレスへのチャンス供給がままならない事態を招いたのだ。

 ただ、0-2とリードされて開き直った後半は攻撃も機能するようになった。トーレスも63分にはPK、69分にはFKを奪ってジェラードによる2得点をお膳立てし、チームとファンに宿敵からの逆転勝利への望みをもたらしている。

伝説の名FWは「いてくれるだけでも有り難い」と評価。

 結果的に惜敗だったマンU戦は、リバプールの英雄、ケニー・ダルグリッシュの回想録『My Liverpool Home』の出版記念会見から2日後のことだった。今季からはリバプールで「フットボール・ディベロップメント」部門の責任者も務める往年の名FWは、会見の席で現エースについて問われると、「彼はクラブを心から愛している。リバプールにいてくれるだけでも有り難いと思わなければ」と答えた。

 トーレスは、最愛の地元クラブであるアトレティコと「同じ臭いがする」と言って、当初からリバプールに愛着を示してきた。タイトル獲得の夢を求めて移籍したクラブは、その後、経営難で補強もままならない窮状に陥っている。昨季末に明かした「トップクラスがあと3、4名欲しい」という補強の願いは、今夏も現実にはならなかった。それでも当人は、チェルシーやマンCの誘いを振り切って残留を決めた。「クラブへの情熱はかつてないほど強い」とまで言い切った。リバプールを「第2の故郷」と呼んではばからないスペイン人は、“スカウサー(リバプール市民)”らしい英語も習得し、「間違いなし」を意味する“デフォ(definitelyの隠語)”がお気に入りだという。

 ダルグリッシュと同じく、「ワールドクラスのCFを擁するクラブはプレミアでも希少だ」とトーレスの有難みを強調するホジソンは、マンU戦前後の欧州戦と国内カップ戦でトーレスに完全休養を与えた。敗戦のリスクを覚悟でエースのコンディション回復を優先させたわけだ。

 これからトーレスが本領を発揮することは“デフォ”だと期待したい。

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