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熾烈なソチ五輪代表争いの鍵を握る、
フィギュア選考基準の中身とは――。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2013/06/30 08:02
昨年の全日本選手権後に選出され、3月の世界選手権に出場した高橋大輔ら。
ソチ五輪へ向けて、各競技の代表選考基準の公表が相次いでいる。その中で、6月19日、日本スケート連盟も代表選考基準を発表した。
注目されていたのは、世界でも上位の選手がそろうフィギュアスケートの男女シングルである。現段階でのワールド・ランキングは、上から羽生結弦が2位、高橋大輔が3位、町田樹が9位、小塚崇彦が11位、無良崇人が13位、女子は浅田真央が2位、鈴木明子が3位、村上佳菜子が7位、今井遥が21位……となっている。
男女ともに日本の出場枠は3だが、どのように選考するのか、関心が集まっていたのだ。
明らかにされた基準は、次の通りである。
(1) 1人目は全日本選手権優勝者を選考する。
(2) 2人目は、全日本2位、3位の選手とグランプリ・ファイナルの日本人表彰台最上位者の中から選考を行う。
(3) 3人目は、2の選考から漏れた選手と、全日本選手権終了時点でのワールド・ランキング日本人上位3名、ISUシーズンベストスコアの日本人上位3名選手の中から選考を行う。
バンクーバー五輪のときの選考基準と比べて、最初に目につくのは(1)である。バンクーバーでは、グランプリ・ファイナルの日本人最上位メダリストが最初に内定を得ていたことを考えれば、全日本選手権に重きを置いたかのように思える。
恣意的な「判断」の余地を残した、総合的な選考基準。
そして残りの2名は、(2)(3)の基準にのっとって選考される。今春の段階で、「特に男子は一度では代表は決められない。全日本選手権後に総合的に判断したい」という考えを明らかにしていたことから、その方針どおりに進められたことが分かる。
(2)(3)ともに、その中身はかなり幅を持たせているため、それぞれの基準内に該当するであろう複数の選手の優劣をどのようにつけるか、誰を選ぶかは、選考する側の、まさに「判断」に委ねられる。
代表選考のあり方には、正解はない。ひとつの大会での成績をもとに選考する、いわゆる「一発選考」には選考がすっきりするメリットはあるが、実績や実力のある選手がコンディションの問題などでパフォーマンスを発揮できず、落ちる可能性もある。
その逆に、さまざまな要素から選考する場合は、選考対象の大会で本来の実力が出せなかった選手を救うことはできるが、曖昧さや不透明感が残ることも少なくはない。ときに、競技以外の背景が取沙汰されることだってある。